騒動を受けてアメフト部の内田正人監督、井上奨コーチが辞任する一方、メディアの前に姿を見せないのが理事長の田中英壽氏。数年前の反社会的勢力との交際に関する報道も蒸し返され、傍から見ると何らかのペナルティは必然とも思われたのだが、今もってそうした話は聞こえてこない。

母校職員から出発し頂点に立った日大・田中英壽理事長(写真左)。過去には学生横綱(同右)、アマチュア横綱の座を獲得している。(時事通信フォト=写真左、AFLO=写真右)

「結局、OBをはじめ“うるさ型”を黙らせる役回りは、現在の田中理事長にしか務まらないのです」

島野氏は、ある人が田中理事長を故・田中角栄元首相に例えたのをきいて、なるほどと思ったと言う。

「外部の人にはいろいろヒンシュクを買うその言動も、組織内部の人間から見れば許容範囲。むしろ頼れる親分なのでは。系列校やOBも含め、あれだけの大組織を束ねているのですから。世間では強面のイメージがありますが、要所では如才ない振る舞いができる人なのかもしれません」

大学の統治形態には、理事長が代々世襲されたり、学長を兼ねる、学外で活躍したOBが就くなど様々だが、

「田中氏のように理事長が大学職員出身だと力を持ちやすい。なにしろ大学の内情を知り尽くしていますから、カン所をすべて押さえられるわけです。OB組織の日本大学校友会本部で要職を歴任した田中理事長は、その下部組織で、時に内なる圧力団体となり、選挙における自民党の集票マシーンの役割を担うともいわれる桜門会をしっかり束ねています」

心あるOBの最大の懸念の1つは、ブランド失墜による“日東駒専”という首都圏私大の序列からの脱落だろう。

「私はそれはないと考えてます。この四半世紀の間、ずっと大学の盛衰を見てきましたが、上・中位の大学の序列にはまず変動はありません。アメフト部というパーツではなく、例えば受験そのものの不正といった大学全体の信用を毀損する出来事でも起こらぬ限り、脱落はありえない。一サークルがひどい事件を起こそうと、早稲田や慶應義塾の序列が動かないのと同じです」

では、日大グループは今後も安泰かといえばそうとは言い切れない。田中理事長に批判の矛先を向けない日大関係者でも、今や「日大が落ちぶれてしまうのでは」「学生が集まらなくなるのでは」と不安を口にする状態という。