後妻業とまでいかなくても、高齢男性がカモになる機会はその辺に転がっているのだ。とはいえ、自分の子どもの結婚相手ならともかく、自分の親の恋人の調査とは……。

「タイミングを見て探偵さんに素行調査を依頼するのもアリ。調査の報告と普段の話に整合性があるかを見ます。ちょっとした“盛る行為”は誰にもありますが、その程度が問題です。恋愛ごっこの可愛い見栄か、計画的なレベルなのか、嘘の大きさが判断基準になる。普段の話と乖離し過ぎていれば怪しい」(河野氏)

探偵の素行調査は、家や勤務先、名前、家族構成、独身・既婚の確認、同居者の有無、普段の生活などを調べるのが基本。さらに相手がどういう人たちと交流があるのか特定する。調査費用は50万~100万円。このあたりは相続する財産の金額との兼ね合いだろう。探偵事務所は弁護士からの紹介や警察の生活安全課、コンサルタントなどに紹介してもらう。「一般社団法人日本調査業協会」に相談し、自分で納得のいく探偵を見つけるという方法もある。

『後妻業』では、結婚相談所の所長が後妻に協力していたが、女性の周辺には注意が必要だ。都内のとあるスナックの事例では、ママの男が、若いホステスたちに、客の勤め先、役職、夫婦仲、単身赴任か否かなどを会話の中で聞きだすよう指示していた。フィードバックされた情報をもとにカモを定め、写真を撮ったり弱みを握り、頃合いを見計らって強請(ゆすり)に走る。カモにされたのは役所勤めや会社で要職に就いている人だった。

「住まいが高級住宅地だと狙われやすいし、自分の資産額をバラしたり、派手なお金の使い方をしている人も危ない。自慢したくなる気持ちもわかりますが、そこはわきまえないといけない」(金澤氏)

やはり近づいてくる女性には、背後に“怪しげな紳士”がいる可能性に注意しておくべきだろう。もし法律や税金に詳しい人物が協力していたら、かなり厄介だ。

「士業の中には、詐欺の片棒を担いで“小菅(東京拘置所)に入っちゃった人”もいて、資格を剥奪されたけれど税法に詳しいという人はいる。そういう人が協力すると手強くなるのでは」(高野氏)