「前澤さんはハラハラするけど面白い」
こうした情報発信について、ほかに長けた経営者はいないのだろうか。藤田社長に聞くと、「ZOZOの前澤友作社長」という名前が挙がった。
「前澤さんは見ていてハラハラするところがありますが、面白いですよね。意図的にハラハラするようなことを言っているのかは分からない。ですが、結果として買い物をするときにはZOZOTOWNが頭に浮かぶし、ZOZOSUITはみんなが知るところになった。とはいえ、(発信には)うまい下手があるので、万人に求めるのは難しい」
また社員の発信力については、必ずしも全員に求めるものではないという。
「長年やってきて思うのは、みんなの発信力ってたいしたことがないということです。もちろん情報発信をしてくれたほうがいいのですが、(1人1人の)影響力はそこまでありません。ですがネット上で有名なインフルエンス力を持った社員を1人でも育てると、情報が広がり、影響力も出せます。例えば(サイバーエージェント傘下の)『新R25』編集長の渡辺将基。彼はうまい。そういう才能を見つけて、育てたいです」
社員に「起業しろ」とあおる投資家は迷惑
藤田社長がいま発信したいのは、ベンチャーキャピタルが自社の社員に起業を促すことについてだ。
「よく社員に『起業しろ』とあおってくるベンチャーキャピタルがいるのですが、これは迷惑です。われわれからしてみると、育てた社員が辞める上、競合が生まれるかもしれないので、マイナスでしかありません。起業すること自体は良いことだと思いますが、VCは商売です。社員を辞めさせて、起業させて……そういう人間が増えたら彼らに(資金を)突っ込んで稼ぐわけです」
「最近はうちの会社を辞めた人間がやっているファンドも増えてきました。『自分も元々社員だった』というつながりで声を掛けてくるので、私が『迷惑だ』と公言しないと社員も判断しかねます。こういうことは社員を集めて話しても姑息な感じがするので、外部に発信したほうが早いと思いました」(藤田社長)