今回の計画策定に当たり、介護職員の今後の需要と供給を推計した結果、都における介護人材の需要は、25年度には約22万7000人になるという数字が算出されました。一方、将来の離職率や再就職の割合、入職者数を勘案した供給は約19万2000人で、約3万5000人不足することが見込まれています。この需給ギャップを埋めるためには、25年度まで、毎年約3500人の介護職員を新たに確保するとともに、定着を図る必要があります。

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少子高齢化により労働力人口が減少する一方、景気が緩やかに回復し、都内の有効求人倍率は上昇傾向にあります。16年の東京都の全職種の有効求人倍率は1.74倍でしたが、介護関連職種では5.86倍となるなど人手不足が深刻化しています。

介護現場で働いている方の年齢層に注目すると、介護職員の50歳以上の方の割合は、施設では3割、訪問介護ではなんと6割を超えています。高齢化が進み、この方々が退職されていくと、一気に働き手が減少。また介護ノウハウの継承も危ぶまれるという事態に陥るのです。

介護関係の仕事はほかの産業に比べても離職率が高いことで知られています。近年の都内の状況は14年から連続して改善していますが、それでも介護関係職種の離職率は16年で14.9%ありました。事業者の規模別に見ると、大規模事業者よりも中小事業者の離職率が高いことは無視できません。つまり、中小事業所の職場環境をいかに改善し、いかに人材の定着を図っていくかということです。

介護職員が仕事を辞める理由を確認すると、世間でよく言われる「収入が少ない」が上位に入っています。しかし介護報酬改定でここ数年、賃金が上昇していることもあり、必ずしもトップではありません。離職理由の1位は、職場の人間関係の問題。2位は事業主や施設の理念や運営方法への不満でした。つまり、「介護」の仕事に熱意を持って働き始めた人が、理想と現実のはざまで苦悩されているのです。

今回策定した計画には、さまざまな人材対策を盛り込みました。人材確保については、介護の仕事を望む若者を積極的に支援していきます。在学中に奨学金の貸与を受けた新卒者を雇用して、雇用者が被雇用者の奨学金返済のために相当額を支給した際、事業者を補助する仕組みなどを整えています。そして、職場環境の改善として、介護職員の業務負担の軽減を図るため、ICTや介護ロボットの活用を推進していきます。また、処遇改善として、介護職員の方が将来を見据えて働いていくことができるよう、キャリアパスを導入する事業者を支援してきました。18年度からは、その取り組みをより一層進めるため、キャリアパスを導入した結果、人材の定着が図られた事業者への支援を充実します。