一方的に情報を聞き出しすぎない

そのために必要なのが、相手の実情や本音を聞き出す力。加藤氏が勧めるのは、相手が気持ちよく話せるように促すアクティブリスニングだ。この手法には5つの要素があり、「相づち」「繰り返し」「要約」、相手の話す速度に合わせる「ペーシング」、相手の変化などに気づく「キャリブレーション」を意識するといい。加えて「目から感情を探る」ことも意識する。

ただ知りたいことを尋ねるだけでは傾聴にならない。質問を誤れば、逆効果ということもある。

「交渉中に『この案件は誰が決裁者ですか?』とストレートに質問すれば誰だって身構えます。『この案件が決定するまでのステップはどうなりますか?』とさらっと聞けば、相手は抵抗なく答えて決裁権者も聞き出しやすくなります」

ここで注意したいのは、一方的に情報を聞き出しすぎないこと。気持ちよく話していた交渉相手が、途中で「情報を出しすぎて不利だ」と感じた瞬間、情報の窓を閉じることがある。加藤氏は“返報の原理”を使うべきと助言する。

「情報はこちらから先に提供する。そうすれば、相手も自然と何か返さなければいけない気持ちになります」

▼日本一のポイント:決裁者を見抜くステップ確認

加藤有祐(かとう・ゆうすけ)
ソフトバンク ビッグデータ戦略本部企画開発部部長代行
中央大学大学院修了後、2007年ソフトバンクに入社。現在はグループ会社AgoopのCTOを兼務している。ソフトバンクグループで4名しかいない「Win-Win交渉力」の社内講師を務める。
(撮影=市来朋久)
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