▼case 1
65歳まで会社に再雇用、その後はアルバイト

多少の支給停止は受けるが、5年間働いた分年金は増額
(金田家)夫/平均年収600万円。65歳まで再雇用で手取り年収206万円。その後はアルバイトで70歳まで年収120万円、以後、年収70万円。妻/5年間会社員として働き、専業主婦に。夫より2歳年下。60歳時点の世帯貯蓄2500万円で変動率は年0.3%。支出は基本生活費300万円、住宅維持費30万円、特別費(レジャー費、介護費など)50万円で、変動率は年0.5%。

90歳まで残高を維持

定年後も働き続けた場合に年金や貯蓄がどうなるか。2019年定年を迎える3家計のケースで横山氏に算出してもらった。

まずは、大学卒業後電機メーカーで働き、60歳で定年退職する金田さん(仮名)。38年間の平均収入は600万円。妻は5年間会社員として勤めたあと専業主婦となり、子ども2人は独立した。定年退職時点の貯蓄は退職金を含め2500万円だ。住宅ローンは完済済み。毎月の生活費は25万円(住宅維持費年30万円を除く)で、レジャー費などの特別費として年50万円程度を使いたいという。

年金は夫分が63歳から厚生年金が157万円、65歳からは国民年金と加給年金(※1)を加えた274万円が支給される予定となっている。2歳下の妻は62歳から厚生年金が7万円、65歳からは国民年金と振替加算(※2)を加えた87万円が支給される。

金田さんの勤務先には再雇用の制度があるが、これを利用せずに60歳でリタイアした場合、定年後から年金支給開始までの年間収支は380万円近いマイナスに陥り、年金が支給されても、赤字が続く。貯蓄はハイペースで目減りして78歳のときには底を尽く。つまりは老後破綻、ということになる。横山氏は、家計相談に訪れる人に、「90歳、95歳くらいまで貯蓄残高を維持できるようなライフプランを立てるよう、助言している」という。90歳時点での年金の受取総額は夫6502万円、妻が2109万円だが、貯蓄は1400万円を超えるマイナスで、債務超過である。60歳以降も働かなければ家計は成り立たないことは明らかだ。

※1 厚生年金に加入した夫が、妻が65歳になるまでもらえる扶養手当年金
※2 妻が65歳になると打ち切られる加給年金のかわりに妻に支給される年金