パブリックとは何かを定義できるか
説明責任を果たすときに欠かせないのは、受益者負担の概念だ。例えば、四條畷市では子どもの医療費が中学生まで1回500円。これを完全無料化する案もあるが、無料化するための予算を使えば期間を延長し高校生までワンコインにすることもできる。
「そのどちらを選ぶかは難しいところです。無料にすれば喜ばれますが、担当者は『利用者が少し負担すると、ほかのところにもお金が使える』という原理も説明できなくてはならない」
東市長はリクルート出身の女性を副市長にするなど、3人の民間経験者を採用した。彼女たちとこれまでのやり方を維持しようとする職員とは、タイムカードのシステムひとつをめぐってもハレーションが起こる。
「そもそも公務員は摩擦を避けがちなものですが、今は切磋琢磨することを面白いと思える職員がどんどん前に出ていく流れになっていますね」
逆に地方公務員にあって民間にないやりがいは、水道や道路の整備から子どもの教育まで人々の生活基盤を形づくれること。東市長と同様に「世のため人のために働こうという志」は根底に持ち続けるべきだと語る。
「そのうえで、パブリックという意味をもう1度考えなければいけない。職員の採用面接でも必ず質問するのですが、今こそ『人口オーナス期における公』を定義できる人が求められる。私の市長としての責務は、それをできる理想的な公務員がつぶれてしまわない体制をつくることだと考えています」
四條畷市長
2014年外務省に入省。環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめ、貿易協定の交渉に関する業務に従事。15年野村総合研究所インドに入社。自動車業界のグローバル事業戦略・経営戦略の策定を支援。17年四條畷市長選挙において初当選。