しかも、寄与分が認められるのは相続人のみで、相続人ではない長男の妻などは対象外だった。改正後は故人の親族にも寄与分の請求が認められる。この場合の親族とは配偶者、いとこや孫などの6親等以内の血族、義母や子の配偶者など3親等以内の姻族が対象となる。

「この制度はもめごとを激化させる恐れがあります」(武内氏)

遺産分割では、配偶者など相続人以外からの横やりでもめごとが大きくなる傾向にある。現行法では相続人以外は直接、権利を主張できなかったため、ある程度はシャットアウトできた。しかし、寄与分を主張する権利が認められれば、寄与分を主張する親族は、相続人との協議がうまくいかない場合、家庭裁判所に財産の分割を請求することができるようになる。

「さまざまな相続制度が改正されますが、もめごとを防止する最善策は遺言であることを忘れないでください」(武内氏)

遺言を書けば、配偶者の住む場所も確保でき、介護をしてくれた親族に財産を残すこともできる。ただし、“自己流”の遺言はもめごとの元。効果的な遺言を残すには専門家のアドバイスが欠かせないことも心得ておこう。

▼改正後の「普通のお宅」の相続、ここがポイント!
1.自筆の「遺言」の扱いは?
不備が多く無効になりやすい→要件緩和で残しやすくなる
パソコンで財産目録をつくるなど、子世代が手伝って準備するとベスト。
2.「残された親」の住まいは?
相続で手放すケースも→「居住権」で死ぬまで住める
残されるのが「後妻」と「先妻の子」などの場合は、今以上にもめる可能性も。
3.「住居」の相続は?
遺言がない場合、遺産分割の対象→条件を満たせば対象外に
残された親が亡くなった際の二次相続と合わせると、相続税を多く払うケースも発生。
4.「嫁による介護」への労いは?
相続人のみ→相続の権利がない親族も可
嫁など相続の権利がない親族が加わることで、新たな争いが生まれることも。
武内優宏
弁護士
法律事務所アルシエン共同代表。著書に『家族が亡くなった後の手続きがわかる本』(内田氏との共著)など。
 

内田麻由子
税理士
内田麻由子税理士事務所代表、日本想続協会代表理事。著書に『「ふつうのお宅」の相続対策ABC』(武内氏との共著)など。
 
(写真=iStock.com)
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