なぜ日本のGDPは30年も停滞しているのか?
今年の講演テーマは「リーダーシップ」でした。
私は代表のバータルサイハンさんの手腕を見るにつけ、日本の経営者の多くが失ってしまった真の意味での「リーダーシップ」や「チャレンジ精神」を感じるのです。統率力や戦略構想力だけでなく気配り力やサービス精神。全体に目配せして、緻密に考え、迅速に行動する。言うのは簡単ですが、実行するのは極めて難しいことです。
今年は、講演の翌日、グループが経営するトヨタのディーラーを見学しました。そのお店はトヨタの販売方式に基づいて運営されているのですが、店内には、日本国内とは異なり銀行と保険会社が入居していました。モンゴルはまだ所得がそれほど高くありませんから、車を買う人の多くはローンを組みます。そこで銀行がその場で審査すれば、即ローンを組むことができますし、自動車保険も買えます。そうした顧客に親切な取り組みはモンゴル国内では他にあまりありません。
もうひとつの工夫にも顧客第一主義のポリシーを感じました。ディーラー内に入居する銀行と保険会社は各2社。1社は自分たちのグループですが、もうひとつは他の会社のものでした。理由は「ひとつだけでは、競争がないから」というものでした。自社で独占して自分たちに都合の良いビジネスをすることは、顧客の利益にはつながらないと考えたからなのです。
▼顧客第一主義とリーダーシップの欠如
日本は1990年代初頭からすでに30年近く経過しているのに、日本のGDPはその頃から停滞したままです。アメリカは90年代初頭にGDPが6兆ドルで、その後リーマンショックなどがあったにもかかわらず今や3倍の18兆ドルとなっています。経済が急伸した中国のGDPは、この30年で20倍近くにもなっています。
主要60カ国で、実質的にGDPが伸びていないのは日本だけです。その理由のひとつは、現在の政官財のトップに「リーダー力」が欠如しているからだと私は考えています。
私が尊敬する経営コンサルタントの一倉定先生の有名な言葉に「会社には良い会社、悪い会社はない。良い社長、悪い社長がいるだけだ」というものがあります。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業に買収されたシャープは急激に業績を回復しています。これはリーダーの力といっていいでしょう。リーダーが変わることによって、会社の業績も、社内の雰囲気もがらりと変わるのです。
モンゴルと日本が置かれている経済環境は異なりますので、バータルサイハンさんの経営方式を見習えばいいというわけではありません。しかし、顧客第一主義を貫き、組織の先頭に立って、常に何かを切り開いていく強い気持ちを持つ姿勢を今一度、日本の経営者に取り戻してほしいのです。
今年の講演後、バータルサイハンさんから来年の講演もお願いしますと頼まれました。もちろん、私は快諾しました。