かつて医療ミスは「起きて当然」だった

冒頭部分で「根底に大病院に潜む深刻な組織の問題が横たわっている」などと書いたが、筆を置く前にその点について再度触れたい。

沙鴎一歩が医療現場で右往左往しながら取材に追われていた20~30年前は、自ら医療ミスを公表する病院は皆無だった。

政治家や財界人、芸能人などいわゆる著名人が多く入院するような病院になればなるほど、医療過誤を隠そうとした。

信用を失いたくないからだ。世間の目が怖かったのだろう。

いまと違って医療過誤を自ら明らかにしたうえで外部の力を借りて検証し、再発防止を目指すような考えは微塵もなかった。病院にとって医療ミスは「起きて当然」と考えられていた。それが当たり前だった。医療過誤は合併症のひとつだった。患者の立場も弱かった。

しかし患者側からマスコミに情報の提供が行われ、ニュースになることがわかると、他の患者周辺も情報を提供するようになり、病院の医療ミスが芋づる式に次々と明らかにされていった。その流れが広がり、病院がいち早く医療ミスを公表するようになった。

医療過誤が表に出ることなく、検証もされずに内在していくと、病院という組織そのものが腐敗していく。

病院は患者の命を救う組織である。腐敗すると、結局は患者が大きな被害に遭う。その前に芽を摘み取る必要がある。

(写真=時事通信フォト)
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