家事の8割を担う女性が夫の会社を憎む理由
同調査では、夫婦の「稼ぎの分担」の理想と現実に関しても尋ねています。世帯収入に自分(妻)の稼ぎが現在どの程度占めているのかを聞くと「全体の40%以上60%未満」が最多でした(30%)。一方、稼ぎの分担(世帯収入に占める割合)の「理想」はどうだったか。実はこれも「全体の40%以上60%未満」が最も多かったのですが、その数値は39.9%でした。つまり、収入を稼ぐ役割を、現在以上に担ってもよいと考える女性が一定程度いることが分かります。
このことから、共働きの女性は、配偶者(夫)が今以上に家事を担ってくれるのであれば、現在よりも働いて家計を支えることに抵抗感は少ないのだと考えられます。
実際、筆者がパートタイムなど限定的な働き方をしている女性の方に話を聞くと、「配偶者(夫)は働くことには反対してないが、家事をやる気はない。働く時間を増やしたいが、家庭との両立ができるか悩んでしまう」と、現状よりも働く時間を増やすことに躊躇する声は少なくありません。
ただ、まれにフルタイムの仕事を始めたことで、配偶者(夫)が家事を少しずつ手伝うようになったという話も耳にします。すべての世帯(夫婦)にあてはまるとはいえませんが、まずは女性自身の「前進」が、配偶者(夫)の行動を変化させ、現実の理想のギャップを縮めるきっかけになるのではないでしょうか。
【2:配偶者(夫)の長時間労働が家事の短さの原因】
日本総合研究所の2017年の調査では、共働き女性に対して、配偶者(夫)の職場の残業の状況を尋ねました。その結果、残業の多い職場で働いている配偶者(夫)と、残業の少ない職場で働いている配偶者(夫)で比較すると、女性が家事の分担をする割合に差があることが明らかになりました。
残業時間にかかわらず、女性の家事の分担は「全体の80%以上」が最も多かったのですが、夫の残業時間が少なくなるほど、この「家事の8割を負担する女性」の割合が減っているのです。この調査結果はサンプル数が少なくない点に留意が必要ですが、配偶者(夫)の残業時間が減れば、配偶者(夫)が家事参画でき、共働き女性の家事の負担が減る可能性があることを示唆していると考えられます。
さらに、筆者が過去、仕事と家庭を両立しながら働き続ける女性にインタビューした際には、下記のような声がありました。
「3人の子育てをしながら仕事が続けられてきたのは、夫の職場が寛容で、夫が勤務時間を調整してくれたことが大きかった」(40代女性)
「実家が遠く、出張などの場合は、夫に午後半休を取ってもらって保育園の送り迎えなどをしてもらっていた」(40代女性)
さらに、なかには、配偶者が家事などを担ってくれたことで、子どもとの良い関係につながっているという意見もありました。
「幸い夫が10時始業の会社に勤めていたので、保育園への送りは夫にやってもらっていた。夫と娘が今でも仲が良いのは、夫が子どもの頃から家のことを手伝ってくれたことが大きいと感じている」(50代女性)
つまり、企業が長時間労働問題をはじめ、働きやすい職場環境を提供することは、結果的に男性社員の妻(働く女性)の家事などの負担を軽減し、女性の仕事と家庭の両立を促すことにもつながるのではないでしょうか。そう考えると、企業の働き方改革の取り組みは、より働きやすくする波及効果の鍵を握っていることになります。