専業主婦は現金収入がない。ではその価値はゼロかといえば、もちろんそんなことはない。むしろ幸福度への影響が大きいのは、カネで買える「地位財」より、専業主婦がつくりだす「非地位財」なのだ。行政書士で富裕層の金森重樹氏は「幸せになりたければ、専業主婦の価値を見直したほうがいい」とアドバイスする――。

「逃げ恥」のみくりが“愛情の搾取”に断固反対した理由

前回の記事(「幸福にほど遠い」富裕層のお金の使い方)に対して、30代主婦の徳田仁美さんから斬新な視点の意見をいただきました。徳田さんはネットメディア「マネーの達人」でお金関連のコラムを執筆していて、僕の記事に言及しつつ、「非地位財の多くを主婦が生み出している」と書かれています(https://manetatsu.com/2018/02/115298/)。

写真=iStock.com/chinaface

「非地位財」とは、家や車といった「地位財」とは異なり、他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの。例えば、「休暇」「愛情」「健康」「自由」「自主性」「社会への帰属意識」「良質な環境」などです。

徳田さんは僕の記事を取り上げたコラムの中で、2016年にテレビドラマ化され、好評を博した『逃げるは恥だが役に立つ』のある場面を紹介していました。僕は当時見てなかったので慌てて11話分すべてを見てみました。

主人公は、草食男子の会社員・津崎平匡(星野源)と、彼に「家事代行業者」として雇われ“契約結婚”の形で同居する森山みくり(新垣結衣)の2人。ドラマは2人の恋愛観の相違などをコミカルかつシニカルに描いています。

▼「結婚したほうがお互いに有意義」は男の身勝手な言い分

それまで、月額19万4000円(※1)でみくりを雇って、10万2500円の生活費(2人で折半する形)(※2)を引いた手残り9万1500円を家事代行の給与として渡していた平匡でしたが、リストラされてしまいその代金を払うことができなくなりました。そこで苦肉の策としてお金(家事代行の給与)を浮かせるためにプロポーズし、正式に婚姻しようとするわけです。

※1 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」を基に、日本人女性の平均的な時給を1383円と算出。ドラマのように1日7時間勤務で週休2日制と仮定すると、1383円(時給)×7(時間)=9681円(1日あたりの賃金)。1月あたり20日間働くとすると、総労働時間は140時間となり、月給は19万4000円となる。
※2 家賃15万円、光熱費2万5000円、食費3万円

ドラマの中で平匡はみくりにこう言います。

平匡「試算してみたんです。結婚すれば、雇用契約は必要なくなります。今までみくりさんに支払っていた給与分が浮いて、生活費ないしは貯蓄に回すことができます。結婚するのとしないのとでは、3年後、5年後をシミュレートすると、このくらい差が出ます。

これだけあれば、中古の家を買ったり、将来的に子供が1人ないし2人できたりしてもなんとかなります。その場合のデータがこちらです(ドラマ中では平匡がみくりにプレゼン資料を提示)。つまり、結婚したほうがお互いに有意義であるという結論に達しました。つきましては……」

(中略)

みくり「結婚すれば給料を払わずに私をタダで使えるから合理的。そういうことですよね?」

平匡「……そういうことに?」

みくり「なってます!」

平匡「みくりさんは、僕と結婚したくは、ないということでしょうか? 僕のことが、好きではないということですか?」

みくり「それは、好きの“搾取”です! 好きならば、愛があれば、なんだってできるだろうって、そんなことでいいんでしょうか。私、森山みくりは、“愛情の搾取”に断固として反対します」