専業主婦は現金収入0円だが労働評価額は年304万円超
みくりは、これまでの契約婚から通常の結婚に切り替わることで自分の労働の対価(約9万円の家事代行の給与)がもらえなくなるのが不満だったのです。
結婚した後に離婚をすると妻は原則として資産の2分の1を分与してもらいますし、死別すれば相続で遺産としてもらうことができます。その事実を知ってか知らずか、みくりが「“愛情の搾取”に断固として反対します」と宣言したのは、これまで契約婚でもらえていたフローの収入が結婚後も欲しいから、ということなのでしょう。
一般的に、夫が会社員で妻が専業主婦かパート主婦の家庭の場合、財布を握るのは奥さんとなることがよくあります(夫は小遣い制)。ドラマの2人がこの形であれば、収入の管理権は、契約婚から結婚に変わった時点でみくりが担うことになるので一概に搾取されるとは言えないと思いますが、それはさておき。
無償労働である「家事活動」の貨幣評価額については、ドラマ内では内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部が総務省「社会生活基本調査・2011(平成23)年版」をもとにして推計を行っています。
この推計によれば専業主婦の無償労働評価額は年304.1万円となります(OC法(※3)による)。ドラマの「愛情の搾取」をはじめとする、みくりのセリフの背景にある「報酬がほしい」という気持ちはこの数字を前提としたものと言えるでしょう。
※3 OC法(Opportunity Cost method:機会費用法):外で働いたら得られたであろう逸失利益で評価する方法。無償労働を行った者の賃金率(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の男女別・年齢階層別の1人当たり時間給)を使用するため、誰が無償労働を行ったかで評価が変わりうる
▼主婦は「外注できない仕事」をすべて引き受けている
この無償労働については、「人に頼むことができる」という委任可能性基準、
a.家事(炊事、掃除、洗濯、縫物・編物、家庭雑事)
b.介護・看護
c.育児
d.買物
e.社会的活動(ボランティア、献血、消費者活動、住民運動など)
をもとに計算されています。
つまり、ここで計算されている「年304.1万円」はあくまでも外部に委任することができるものであり、専業主婦の仕事は、実際にはa~e以外にもたくさんあります。主婦の活動は、家庭生活に必要な事柄についての勉強や、夫との会話や営み、子供の運動会の観戦、親族間の義理ごとなど、本人でければできないがたくさんあります。でも、それらに関してはアウトソーシングできるものではないので金銭的評価の対象にはないっていません。