家計には「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」という法則がある。このため収入が増えただけ貯蓄を増やす、というのは難しい。どんな消費で財布のひもが緩んでしまうのか。多くの家計相談を受けているファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんが、5つの「NG消費」を指摘する――。

支出の額を収入の額に達するまで膨張させる人々

2017年末に引き続き、2018年は年初から株価の上昇傾向が続いている。1月18日の東京株式市場で日経平均株価が一時2万4000円台に乗った。1991年11月以来、26年2カ月ぶりだという。

株価の上昇は、給与の上昇要因のひとつでもある。

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厚生労働省が、1月上旬に発表した2017年11月の現金給与総額は、前年同月比0.9%のアップ。物価上昇分を差し引いた実質賃金は0.1%増にとどまるなど、物価の上昇に賃金が追いついていない感はあるものの、2017年の勤労者の賃金は、4年続けて前年比プラスとなる見込みのようだ。

もちろんすべての企業の給与がアップしているわけではない。物価が上昇しているのに、給与は変わらず。それどころか、働き方改革などにより残業が減らされ、その分の給与の手取りも減った。「景気が良いなんて、まったく実感がない」と、ため息をつく人もいるだろう。

とはいえ、中には、少し給与が上がり、ついつい財布のヒモが緩んでしまっている人もいるようだ。

▼収入増なのに貯蓄が増えないA子さん世帯(33)

都内在住の会社員A子さんは、33歳。会社員の2歳年下の夫と2歳になる娘がいる。

A子さんからはじめて家計相談を受けたのは約3年前。結婚したばかりで、今後の家計管理の方法や夫婦の保険加入などについて知りたいと面談を希望された。

新婚ホヤホヤで、これからの生活に期待と不安がいっぱい。真新しい家計簿を持参して、「生活費はこれくらいです」と一生懸命に説明されたことを覚えている。先日、再び相談にやってきた。懸案は、住宅購入についてである。

「3年以内に実家近くのマンションを購入したいと考えています。その頭金を貯蓄したいんですが、なかなか貯まらなくて……。できれば、子どもはもう一人ほしいと思っています」