パートナーに不満を感じたら、認知バイアスを疑ってみる

みなさんの家庭では、家事をどのように分担していますか。炊事や洗濯に買い物、掃除に育児、家計管理、二世帯住宅の場合は介護なども入ってくるかもしれません。こうした数多くの仕事を、夫婦でうまく分担していく必要があります。

私はカウンセラーとして夫婦間のカウンセリング(カップル・カウンセリング)を行っているのですが、「自分はかなり家事を負担している」という不満を抱えている人は少なくありません。しかし、家事の分担割合を客観的に見ると、パートナーも家事をしっかり担当している……ということも多々あります。往々にして、人は自分の貢献度や働きを過大評価しがちな生き物なのです。

この自分自身の貢献度を過大評価してしまう認知の歪み(認知バイアス)は、心理学の世界で『貢献度の過大視』と呼ばれています。認知バイアスとして認定されるくらいですから、自分のほうが多く働いていると感じること自体は決しておかしなことではありません。しかし、家庭というものは会社や趣味のコミュニティのように第三者の目が入りづらい空間のため、なかなかそのことに気付く機会がありません。そのため、新しく家事を任せられると「自分ばかり仕事を押し付けられている」という考えになってしまい、パートナーとの関係がギクシャクする原因となります。

また、「自分のほうが大変だ」と感じるのには、もう一つの認知バイアスも関係しています。『ダニング=クルーガー効果』という認知バイアスは、「人は、経験の浅い仕事ほど自己の働きを過大評価してしまう」というものです。たとえば、ふだん洗濯をしない人が1日だけ洗濯を担当したとします。クローゼットがあふれない衣類のたたみ方や、着ていて気持ちがいいアイロンがけなどは、一朝一夕に身につくものではありません。しかし経験が浅いとそのことに気付かず、洗濯乾燥機のボタンを押しただけで満足してしまい、「洗濯って意外と簡単だ。こんな楽な家事が大変だなんて、パートナーは甘えている」と思ってしまうのです。

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