――上司から学べないとなると、若手はアクティブシンキングをどうやって鍛えればいいのですか。
多くの人に会い、多様な考え方を吸収する以外ありません。それには、会社の中で安住していないで、どんどん外に出ていくことです。私も若いころは、月に1度は図書館に行って、仕事に関係のありそうな最新の文献を読んでいたし、同じような研究をやっている人との情報交換もしょっちゅうやっていました。
海外で自分たちとは違うカルチャーや価値観に触れるのも有効です。それもあって当社では、若いうちから海外出張にはどんどん行かせますし、海外赴任も経験させるようにしています。
生産性を阻害する、やらされ感を排除
――「健康経営による人材の育成と活用」を提唱されています。
健康というと、自分のからだのことと考えがちですが、実は職場の問題でもあるのです。たとえば、お互いが言いたいことも言えないような雰囲気の職場というのは、明らかに健康度が低いと言えます。そして、そういう職場だとストレスが溜まる。すると当然、個人の健康にも悪影響が出るじゃないですか。だから、職場も健康でなければならないのです。
――健康な職場とはどういうことを言うのですか。
全員が仕事にやりがいを持っているということです。コミュニケーションが大事なのは言うまでもありません。新入社員でも女性でも疑問を感じたらすぐに「こういう仕事の仕方はおかしいんじゃないでしょうか」と遠慮なく言える。なおかつ、どうすればもっとよくなるかをみんなでアクティブに考え、行動できるなら、環境はどんどんよくなります。そうすると、無駄なことをやっているという不満ややらされ感がなくなるので仕事が楽しくなるのです。
――当然、仕事のパフォーマンスも上がるわけですね。
そのとおりです。反対に、コミュニケーションが悪い不健康な職場だと、何か不都合があってもみなが我慢して同じことを続けてしまうので、いつまでたっても、もっと効率のいいやり方に改まりません。また、なんでこんなことをやらなければならないんだという気持ちのままでは、仕事に取り組む意欲も低下するから生産性は下がる一方です。