では、これから「コメ黒」がコメダ珈琲店の主流になるかといえば、そうではない。鉄道に例えると、あくまで「本線=ブレンドコーヒー」で、「支線=コメ黒」なのだ。この本線はコメダの“ドル箱路線”で、800店近い店に提供するのに最適な設計だからだ。
関東地区に「コーヒー工場」も建設
筆者が最初に同社の取材を始めた10年前、「コメダ珈琲店」の店舗数は300店台だった。それが冒頭で紹介したように約800店となり、10年で500店近く増えた。
ここまで増えると、店舗拡大に生産能力が追いつかない可能性も出る。そこで従来の中京地区にあるコーヒー工場に加えて、今年中に関東地区で新工場建設を予定している。
「千葉県に建設するコーヒー工場は、『生産能力増』と『拠点増』の位置づけです。2015年に稼働した千葉工場(パン専門工場)は、中京地区のパン工場だけでは供給が厳しくなったために新設しましたが、コーヒー工場も似た事情。現在は北海道にも店舗が増え、物流コストも高いので、東日本地区の各店への安定供給をめざします」(臼井興胤社長)
まだ先の話だが、新コーヒー工場が軌道に乗れば、さまざまな取り組みもできる。たとえば、時代に合わせて「ブレンドコーヒー」の味の微調整も可能だろう。そうした諸事情から考えると、「コメ黒」の各店導入は、あくまでも一里塚。コメダ40年ぶりの「コーヒー改革」につながる可能性を秘めている。
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王・情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。著書に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか』(プレジデント社)などがある。