「解決すべき問題」が解決した時こそ、正念場

──お客様の期待は常に変わっていくので、「現状」も「あるべき姿」も常に変わる。常に解決すべき課題を見つけていかなければならない、ということですね。

【下平】そうです。マネジメントでもいろいろ議論しています。

──どのような方向に向かうのでしょうか?

【下平】お客様の店舗体験や利便性をさらに上げて、その結果でブランドを向上することです。そのためにお客様の目に見える形で、いろいろなイノベーションを起こしていく必要があります。たとえば先日、キャッシュレスにも対応しました。ただ投資をしても、お客様体験が向上しないと、逆にお客様の満足度が下がるというおそろしい結果になります。きちんとお客様にお応えし、次の投資に向かえる成長をするのが大事です。

──KODOはその方向性を教えてくれるのでしょうか?

【下平】もう明確に出ますね。改善したところについては、KODOのコメントがさらに高いレベルに変わっていきます。

──現場とは、どのように議論をなさっていますか?

【下平】ストアーツアー(店内、厨房(ちゅうぼう)をお客様に見学してもらうこと)や、ウェブ会議などを活用して、各地域のスタッフと毎週、QSCのデータや店舗の状況などを見て議論しています。

──厳しい状況の時、「マックらしさが失われた」というお客様の声があった、ということでした。「マクドナルドらしさ」はどこにあるとお考えでしょうか?

【下平】実はそんなに複雑なことではない、と思います。今まで日本でマクドナルドが成功してきた理由は簡単で、「ピープルビジネス」というビジネスモデルだからです。来店されるお客様から見て一番大切なのは、クルーの「スマイル」です。お客様に「スマイル」を感じていただくためにはクルーが幸せと思うこと。クルーが成長することで圧倒的に仕事が楽しくなり、お客様へのサービスをやりがいがある仕組みにすることが一番大切です。

──実際にクルーの人たちはいかがでしょうか?

【下平】「今の若い人たちは」とよく言われますが、うちのクルーを見るとすごく進化しています。毎年、全国のクルーのオペレーションコンテストがあります。甲子園のように全国の店舗から勝ち抜いて年間最優秀者を選ぶもので、〈オール・ジャパン・クルー・コンテスト(AJCC)〉と言います。スマイルの質、スピード、テクニックは年々向上していますし、ポテトを作るスピードもどんどん速くなっています。そういうのを目の当たりにすると、みんな頑張っているなと思いますし、自分ももっと努力していかないといけないと心から思います。

──本日はありがとうございました。

永井孝尚(ながい・たかひさ)
マーケティング戦略コンサルタント
1984年慶應義塾大学工学部卒業、日本IBM入社。マーケティング戦略のプロとして事業戦略策定と実施を担当。さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当。2013年に日本IBMを退社。ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表に就任。執筆の傍ら、幅広い企業や団体を対象に新規事業開発支援を行う一方、講演や研修を通じてマーケティング戦略の面白さを伝え続けている。主な著書に『100円のコーラを1000円で売る方法』『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』(すべてKADOKAWA)、『これ、いったいどうやったら売れるんですか?』(SB新書)、『「あなた」という商品を高く売る方法』(NHK出版新書)などがある。
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