檜原村を「木のおもちゃの村」に
【田原】森林体験?
【青木】町の人は、木材というモノより、環境のために何かしたいとか、自然に触れたいといった体験へのニーズが強い。そこで3本の苗木を植えて、30年かけて一緒に育てようというプログラムです。30年後、3本のうち1本は山のために残してもらい、あとの2本は間伐材として会員にお譲りする仕組みになっています。
【田原】これでどうしてさっきの欠点が解消されるんですか。
【青木】会員の入会金は5万円で、年会費は1000円。30年間で計8万円です。私たちは先に代金をいただくことで、50年後の木材価格に振り回されない経営ができます。もう少し具体的にいうと、一般的に1ヘクタールの山には3000本の木を植えられます。「東京美林倶楽部」は3本1口なので1000口。1口計8万円だと、8000万円が早い段階で入金されます。一方、林野庁の試算によると、1ヘクタールの森づくりの費用は500万円。大きな差額が生まれるので、潤沢な資金を背景にした安定した森づくりを実現できます。
【田原】いま会員数は何人ぐらい?
【青木】約200家族で、まだまだ足りません。ただ、会員はお金を払ってでも森づくりに関わりたいという感度の高い方たちなので、「東京の木で家具をつくりませんか」というように別の働きかけができるかもしれない。このコミュニティを少しずつ増やしていきたいです。
【田原】「森のおもちゃ美術館」構想があると聞きました。これは?
【青木】いま林野庁は食育の木材版である「木育」という考え方を広めようとしています。具体的には、子どもが生まれたときの自治体からの祝い品を木のおもちゃにする「ウッドスタート」という事業を行っています。私たちは「檜原村を木のおもちゃの村にしましょう!」と村長を口説いて、14年にウッドスタート宣言をしてもらった。その流れで、木のおもちゃの美術館をつくろうとしています。
【田原】木のおもちゃが地域振興に?
【青木】ドイツにあるザイフェンという村は木のおもちゃで有名で、クリスマスの時期になると世界中から人がやってきて地元の職人がつくったおもちゃを買っていきます。ザイフェンは人口3000人の小さな村ですが、2000人がおもちゃづくりに関わっているそうです。私たちは、檜原村を日本のザイフェンにしたい。じつは日本の木のおもちゃのうち、国内産は3%にすぎません。伸びしろは大きいはずです。
【田原】コンセプトはわかりましたが、どうやって実現するんですか。
【青木】18年中に村におもちゃの工房をつくります。ブランディングのためには何かもう1つインパクトがほしいので、先ほどいった森のおもちゃ美術館も建設予定です。東京オリンピック&パラリンピックに間に合うように調整中です。