男性だらけの現場に20代の女性ひとり
三井物産フォレストの平取(びらとり)山林事務所(北海道沙流(さる)郡)は、木造の小さな平屋の建物だ。町の景観に溶け込んでひっそりと佇(たたず)むこの事務所で、沙流山林や似湾(にわん)山林など約1万2000haの山林を管轄する。細島彩起子さんは、7人いる社員の1人として、一昨年からここで働いている。現場に出る職員としては唯一の女性だ。
その日、午後から彼女が向かったのは、事務所から車で30分ほどの「七号沢」と呼ばれる仕事場だ。
雪解け後の落ち葉の深い沢沿いに、広葉樹が生い茂っていた。その一部に植林されたカラマツの林から、キャタピラを付けた運搬車が時折、切り出された丸太を運んでくる。彼らが「土場(どば)」と呼ぶ現場は、春の陽気に包まれ、木の匂いが充満していた。
「こうやって現場に来て、車から道具を降ろしていると、『よし、これから仕事だぞ』と気が引き締まります」と細島さんは言う。
積み上げられたカラマツの丸太の前まで来た彼女は、2人の同僚とともに、断面を定規で測っては木材チョークで数値を書き込んでいく。販売前の丸太の太さや本数を帳面に記入し、数量を把握する「受け入れ」という作業だ。