なぜ、先細りの林業に興味を持ったのか

【田原】やめてどうしたのですか。

東京チェンソーズ 代表 青木亮輔氏

【青木】林業をやりたくなりまして。正直にいうと、学生のころは熱心に林業の勉強をしていたわけではないんです。林学科では林業政策や木材工学を学ぶのですが、探検のほうがずっとおもしろかったですから。ただ、学んでいるうちに、高齢化で林業の担い手が減っている実態を知り、逆に興味が湧いてきました。

【田原】そこがわからない。日本の林業は典型的な衰退産業でしょう。どうして先細りする産業に興味を持ったんですか?

【青木】新卒で就職した同期たちは、もう安定した仕事をしてボーナスもたくさんもらっていました。2年遅れている自分が追いつこうとしたら、普通のことをしていてはダメ。探検風にいうと、目指すべきは未開の地です。人が足を踏み入れないフロンティアはどこかと考えたら、衰退産業である林業が頭に浮かびました。

【田原】脱線しますが、日本の林業はいつごろから衰退し始めたのですか。日本は国土の約7割が森林で、戦前は林業が盛んだったと思いますが。

【青木】日本の山は戦後に1度、はげ山に近い状態になっています。昭和20~30年代に再造林が行われましたが、木はそんなにすぐに育ちません。一方、需要のほうは高度成長でピークを迎えます。足りない木材を補うために政府は木材の輸入を自由化。海外から安い木材が入るようになり、日本の林業は衰退期に入りました。かつて再造林した木はすでに成長していますが、いまはそれを伐採する人がいない。森林の蓄積量としては、いまが過去最大といわれています。

【田原】檜原村も担い手がいない?

【青木】檜原村はコナラなどの広葉樹が多く、かつては炭焼きの林業が盛んだったそうです。でも、高度経済成長で町に雇用が生まれて、多くの人が山を下りてしまった。昭和40年代、林業に従事していた人は東京全体で2000人いましたが、現在は10分の1まで減っています。

【田原】さて、林業をやるにあたって何から始めましたか。

【青木】まず地方も含めて林業会社や森林組合の求人を探しました。基本的には人手不足の業界だから、手当たりしだいに電話をかければ、どこか見つかるかなと。でも、現実は甘くなかったです。都会のよそ者がいきなり電話をかけてきても、「採用はない」と門前払いでした。あきらめかけていたとき、ハローワークで、東京都の6市町村が緊急雇用対策事業として半年間限定の求人を出しているのを発見しました。足がかりは何でもいいと思っていたので、とりあえず潜り込みました。