11~13時までは長い昼食休憩となる。昼食はまかないが支給されるというので同僚についていくと、通路の床の上に巨大なステンレスボウルが二つ直に置かれていて、そのうちの一つにはマントウと呼ばれる具なしの肉まんが大量に入っていた。もう片方のボウルにはキャベツと豚肉を大量の油で炒めたものが入っていたが、すでに大半を取り終えた後で、ほとんどキャベツしか残っていない。

食事を受け取るにはお椀と箸が必要だったが、同僚の中年女性が、

「これ使いなさい」

と言って、使っていない弁当箱を貸してくれた。ありがたい。

マントウはパサパサで飲み込みにくく、喉につっかえそうになるのを我慢しながら食べていたが、部長やリーダーほか4~5人の姿が見当たらない。

近くにいた同僚に聞くと、「特殊事例」ということで彼女たちは自宅に帰って食事しているという。別のスタッフもどこからともなく弁当を買ってきた。さっき部長に「休憩中に外に出てもいいか」と聞いたときには、勤務中は外出禁止と言われたのだが……。いろいろと抜け道があるようだ。

住む家の心配をしてくれる同僚

規定時間の13時を10分ほどオーバーしたところで、同僚たちが休憩から帰ってきた。みんな席に戻ると即座にうつぶせになって熟睡し始めたり、あるいはスマホにイヤホンをつないでドラマ鑑賞を始めたりした。何もすることがないらしい。ひたすらマッタリとした気だるい空気が流れており、仕事における緊張感というものが一切ない。

13時半になると衣装に着替えたり化粧をしたりして、14時からのパレードに備える。初日は振り付けが覚えきれずに見学したが、翌日は空き時間に自主練を重ね、どうにかリーダーから出演オーケーをもらった。

小人とピエロは女性ばかりだったが、カーテンで仕切られた隣の部屋には、スタントプレー専門の男性スタッフが5人ほどいた。雑談をしていると

「今はどこ住んでるの?」

と聞かれたので、近くの宿に泊まっていて一泊70元ぐらいだと伝えると、

「なにそれ高いよ!もっと安く住める場所、一緒に探してやるよ。明日一緒に不動産屋に行こう」

と誘われた。気持ちはありがたいが、不動産契約などしてしまったら、もはやこの世界から抜けられなくなってしまう。

「うーん、じゃあもし行けたら……」

と適当に濁しておいたが、いったん仲間となれば情に厚いのは、中国人らしい。