シニア再就職の募集は警備・清掃が主。ほぼ最低賃金の採用
それでは再就職はどうかといえば、こちらの現実はさらに厳しい。ハローワークに行って55歳以上の就職支援を確認すると、警備、清掃、ケアスタッフ、業務アシスタントなどの募集が目につく。体力のある世代とは異なり、シニアは最低賃金に近い採用になる。現在、東京都の最低賃金は時給958円、地域によっては同730円台という状況で、新天地で活躍する夢を描くのはかなり難しいだろう。
もし再就職を考えているのであれば、定年後に動くのではなく、定年前から人脈を築いたり、職業技術を磨いたりするなど、準備しておく必要がある。それでも大企業で働いていた人が、その後、中小企業に行ったとしても活躍できるとはかぎらない。中小企業は社長やオーナーの個性が色濃く出ている職場風土や就業ルールであることが多い。大企業で稟議書作成や社内調整が得意だったとしても、再就職先では社長のトップダウンで物事を進めていて、力を発揮できない場合もあるのだ。
まったく新しい環境で一から仕事を覚えることは、高齢者には大きなリスクである。カルチャーが違うことを理解して、そこに挑戦できる若い発想と心意気がある人は馴染めるかもしれないが、そうでないと「こんなはずじゃなかった」と後悔の日々を送りかねない。そう考えると、それまでの賃金や仕事の内容から変わるというストレスがあったとしても、再就職よりも再雇用が無難と言えるのではないだろうか。
再雇用で減額の幅が大きかったときは、差額を埋め合わせる制度「高年齢雇用継続給付金」を利用したい。60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金の61%以下まで落ちた場合、65歳の誕生月まで月賃金の15%、61%超~75%未満でも一定の割合で支給される。退職後に失業保険を受けた人が再就職した場合、一定の要件をクリアすれば、「高年齢再就職給付金」として、2年間、最大で賃金の15%が支給されることもある。
やりがいと給与の両立は難しい。自分が60歳になったとき、どのような状況に置かれているか。30~40代の早い時期から仕事、家族、貯金などを想定して考えておくべきだろう。
▼やりがいと賃金を同時に獲得するのは難しい
経営人事コンサルタント
1951年生まれ。ワークジョイ代表。高年齢者雇用アドバイザーとして、約300社の調査・相談を担当した経歴を持つ。著書に『60歳までに知らないとヤバい定年再雇用の現実』(角川SSC新書)。