違法就労を否定できない販売所
筆者は今年3月、ハイ君が働くASA赤堤の所長(経営者)に、新潮社の国際情報サイト「フォーサイト」の編集部を通じて取材を申し込んだ。「フォーサイト」は筆者が長く外国人労働者問題について連載しているサイトである。事前に送った質問は以下の通りだ。
(2)今年2月末に配達区域を統合した理由。
(3)ベトナム人奨学生に限って配達に自転車を用いる理由。
(4)朝日奨学会は奨学生の休日を「隔週2日(4週6休)」と定めているが、ベトナム人奨学生が週1日しか休日を与えられない理由。
(5)ベトナム人奨学生の「週28時間以内」を超える就労への見解。
所長は対面でのインタビューには応じず、書面でこう回答してきた。
<日本で、働きながら勉強している学生を応援する為に採用しています。今後とも、法律を守るように努めます。>
個別の質問には答える気がないようだ。ベトナム人奨学生の違法就労問題に関しては、明確に否定すらしていない。
朝日奨学会も「差別待遇」を容認
では、ベトナム人奨学生を販売所に斡旋している朝日奨学会は、違法就労と差別待遇の問題をどう認識しているのか。同東京事務局に具体的な質問を添えて取材を申請すると、ASA赤堤と同様、ファクスでこんな回答が送られてきた。
<外国人奨学生が在店する朝日新聞販売所(ASA)には、「毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない」とする労働基準法や「週に28時間以内」の勤務時間を定めた入国管理法(※入管難民法=筆者注)などの順守を、日頃からさまざまな場で呼びかけています。ASAはそれぞれが独立した企業ですので、個々のASAでの労働環境については逐一把握しているわけではありませんが、外国人奨学生から相談があった場合は、奨学会として真摯に対応しています。>
朝日奨学会が採用する日本人奨学生には、「隔週2日」の休日が与えられる。片やベトナム人など外国人奨学生に対しては「労働基準法」を持ち出し、休日は週1日で構わないという。奨学会自体も、外国人奨学生に対する差別待遇を容認しているわけだ。
自転車での配達問題に対する回答はなかった。一方、違法就労については、「独立した企業」の問題として突き放す。販売所で不祥事などが起きた際、自らとは関係ない「取引先の問題」として片づけるのは、大手新聞社の常套手段だ。