「テレビだから」で、何でも許されるわけがない
話を番組制作スタッフからの「問い合わせ」に戻そう。テレビ業界の下請けブン投げ体質であるとか、子請け・孫請け・ひ孫請け……という業務の流れのなかで、制作費がどんどんピンハネされていく構造などは、私なりに理解しているつもりだ。末端の制作会社ともなれば、その労働環境はまさに「劣悪」のひと言だと聞く。たとえ局の社員だとしても、制作の現場では入社して数年程度の若手なら馬車馬のごとくコキ使われて当然の世界だ。
そんな厳しい番組制作の現場に身を置く彼らに、同情する気持ちもないわけではない。ただ、それを補って余りあるほどのバカなスタッフが、問い合わせの場面で目立つのだ。
テレビの制作スタッフから記事の転用などについて問い合わせがあった際、私が編集に携わるニュースサイトでは、以前であれば「サイトのPRになるなら」と無償で記事の使用を許可していた。だが、あまりにも頻度が高いのと、「ネタをパクられた感」「徒労感」だけが残るため、今では使用料をもらうことになっている。
そうしたやり取りをするなかでわりと頻繁に聞かされるのが、「番組内で実際に使うか使わないか、まだわからないんですけど~」や「テレビなので、直前に企画が差し替えになる場合もあります。ご了承を~」といったセリフである。彼らは悪びれもせず口にすることが多いのだが、なんとゴーマンな言い分であろうか。
こちらは時間と手間をかけて協力しているというのに、彼らの論理からすれば「使われなかったとしても、仕方ないよ。だって、オレらは“テレビ様”だから」ということになるらしい。「テレビとは、そういうもの」と言えば、みんな当然のように納得してくれるとでも思っているのだろうか。
フェイクニュースを疑ってきたテレビマンの話
そして先日、ウルトラバカが登場した。その番組スタッフからの問い合わせには、私の同僚が対応したのだが、やり取りがとにかくむちゃくちゃなのだ。ある巧妙な詐欺事件に関する記事への問い合わせだった。彼の質問がすごい。
「この内容、事実ですか?」
その記事は、これまでも同様の事件をいろいろと追いかけてきた専門のライターに寄稿してもらったものであり、こちらとしては「事実にもとづいた信憑性の高い内容」と自信をもって掲載している。先方は「念のため確認したい」という程度で他意はないのかもしれないが、それにしても尋ね方というものはあるだろう。いきなり「お前ら、フェイクニュースを載せてないだろうな、アァ?」と聞いてきたようなものなのだから。
同僚は「事実として出しております」と丁寧に答えたが、別に「ハァ? ウソだと思ってるんだったら、テメェがイチから取材すりゃいいだろ、ボケ!」と突き放しても構わないところだ。こんな失礼なことを言われつつも同僚は対応を続けたのだが、ここからバカの迷走がさらに加速していく。
「実は、再現ドラマをつくろうかと思っております。この記事を参考にして、つくらせていただくことは可能でしょうか?」
先述したように、番組でこちらのつくった記事を使う場合には、使用料を請求することになる。合わせて、出典元としてクレジットを出してもらう必要もある。