記事の使用料を払いたくない、ということ!?

ところが制作マンは「参考にさせていただく」という主張を続け、使用料を回避するような方向に話を持っていこうとした。

対して同僚は「それはつまり、われわれの記事を使って再現ドラマをつくる、ということですよね? あなたたちのオリジナルのネタというわけではないですよね?」「だとすれば、こちらには出典元としての権利があります。まずは使用許諾に関する申請書を提出していただき、こちらで検討させていただきます。そのうえでOKとなれば、使用料をお支払いいただき、ドラマをつくっていただく、ということになります」と伝えた。先方は、どうしてもカネを払うのがイヤだったのか、「考えます」といったん電話を切った。

それから数十分後、また制作マンから電話があった。

「先ほどの件、上に確認したところ、すでに再現ドラマをつくってしまっているということなので、使用料をお支払いします」

どうしてそんな大事なことを把握しないまま、こちらに問い合わせをしてきたのか。最初の「参考にさせていただく」を巡る電話のやり取りは、完全に無駄な時間だった。状況的には、ルールどおり申請をおこなって、何としても媒体と著者の許諾を取り、クレジットを明記して再現ドラマを放送する……という選択肢しかなかったわけだ。この制作マン、一体何を考えて右往左往していたのだろうか。

制作会社の予算不足、人手不足に起因する仕事の劣化

おそらくは局のディレクターあたりから「おいおい、この話マジかよ? こんなよくできた話ってないんじゃねぇの? しっかり裏取りしておいてくれよ!」などと強い口調で言われて、下請けの悲しさかな、「承知しました!」と即答。次の瞬間にはわれわれの編集部に電話をかけていたのではないだろうか。

それにしても「この記事の内容は事実ですか?」という聞き方はありえない。あまりにも失礼すぎる。結果的には、すでに再現ドラマはつくられていることが発覚し、もはや後戻りはできない状態だったこともあって、「使用料を支払います。クレジットも出します」ということで合意ができたのだが、もしも制作陣の誰かが記事の信憑性に疑念を抱かず、問い合わせしてこなかったら、ネタをパクられただけで終わっていたかもしれない。

こうした非常識な問い合わせ、一方的な問い合わせは、これまでに何度も経験してきた。背後には、番組制作会社の慢性的な予算不足と人手不足があり、それが仕事の質の劣化につながっているのだろう。