嫌な予感……A君は深海魚になってしまうのか

嫌な予感がした。

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付属高校受験という前向きな意識に見えて、その実、「深海魚化」するリスクもあるように感じられたのだ。わたしはA君の母親に電話をかけ、あるお願いをした。もう塾生ではないのだが、どうしても伝えたかったのだ。

「お母さん、A君の中学受験は残念ながらまだ終わってはいません。わたしはお父さんがA君の中学入試結果についてちゃんと面と向かって話をすることが必要だと思います。お父さんに協力をしてほしいのです」

数日後、母親から電話がかかってきて、こううれしそうに言った。

「先生、ありがとうございます。AはB中学でこのままがんばると張り切っています」

▼A君の父親が息子にかけた「言葉」

わたしが母親に「お願い」をした後の休日の夕食時。家族3人が食卓についたタイミングで、父親が息子に「真意」を尋ねたそうだ。A君は、いまの学校が楽しいこと、でも高校受験でリベンジを果たしたいことを話した。父親は無言でうなずいていたが、息子の話が終わったあと、こんなことばを穏やかな表情で語りかけたそうだ。

「お前は中学受験をがんばったよ。残念ながら第1志望校は届かなかったけれど、父さんはB中学に合格できたお前は大したものだとうれしく思っている。A、このままB中学でがんばりなさい」

その途端、A君は全身を震わせて泣きじゃくったそうだ。

季節はもう初夏を迎えていた。このときようやくA君の中学受験は終わったのだ。彼は尊敬する父親に認められたいと心の中でずっと願い続けてきたのだろう。尊敬する父親が自分を認めてくれたことで、A君のモヤモヤは晴れた。

第1志望校に受からなかったからといって、その後の人生が台なしになるわけではない。そのことを子どもだけでなく、親も認識しなくてはいけない。子どもの中学受験を本当の意味で終わらせ、楽しい中高生活を迎えさせるきっかけを作るのは、親しかいないのだ。

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