日本の大学は筆記試験に頼りすぎていた

各大学の取り組みの裏には、「筆記試験での選抜に頼りすぎていた」という反省があるようだ。藤井氏は「欧米では筆記試験だけで合否を出している大学はない」という。藤井氏によれば、米国の大学であれば、筆記試験だけでなく、アカデミックな領域での受賞歴や課外活動の内容、自分に関するエッセイの提出が求められ、卒業生による面接もある。英国の大学では、筆記試験の後に大学教授とのディスカッションが行われることも珍しくないという。

ベネッセコーポレーション 学校カンパニー 大学・社会人事業本部長、英語・グローバル事業開発部 部長 藤井雅徳氏

なぜ海外大学では筆記試験以外の要素を重視するのか。それは筆記試験だけでは「本当に学力のある生徒」を逃してしまうかもしれないからだ。

例えば、筆記試験は得意だが課外活動などには消極的な「受験生A」と、筆記試験は苦手だが、コミュニケーション能力が高く、英語でのプレゼンテーションも得意な「受験生B」がいるとする。筆記試験では、受験生Aの能力は評価できるが、受験生Bの能力は評価できない。だが受験生Bの学力は本当に低いのだろうか。また卒業後に活躍できるのはどちらだろうか。社会が求める人材要件が時代とともに変わってきているため、判断が難しいところだ。

「入試の早期化が進む可能性は高い」

受験生の学力が多面的・総合的に評価されること自体は、望ましいことだろう。だが評価方法が変われば、試験対策も変わる。藤井氏は、「海外では結果として入試の早期化・長期化が起きており、日本もそうなるはずだ」と語る。

「いかに早く優秀な学生にアプローチをしていくかという意味では、選抜上、“青田買い”のような状況になってしまいます。学生は早く合格したいですし、大学も優秀な生徒を早く確保したいので、入試の早期化が進む可能性は高いです」(藤井氏)

筆記試験で評価されるのは試験本番の得点だけだが、「自己推薦書」を書いたり、面接でアピールしたりするには、受験シーズンの前から広い意味での学びを積み重ねる必要が出てくる。藤井氏は「理科であれば実験して論文を書く、社会科学系ならビジネスプランを考える、ディベートの大会に出るなど、勉強の領域が変わっていくでしょうね」とみる。

受賞歴などのアカデミックな活動や、課外活動での実績なども評価の対象になるなら、学びの期間という意味では、受験の早期化・長期化が起こることになる。