ハーバードと東大なら、全員がハーバードに行く
そこまでして複雑な試験が必要なのか。むしろ筆記試験だけのほうが負担は軽いのではないか。藤井氏は「これからの社会に向けて子どもたちが育つために必要な、高校と大学の接続のあり方を新しい概念で考えてかなければならない」と語る。
すでに海外では多面的・総合的評価を行うのがスタンダードになっている。しかもそうした大学のほうが人気を集めているのだ。
2008年にベネッセグループが開講した進学塾「Route H」では、これまでに17人が東京大学とハーバード大学やイエール大学など海外の名門大学の両方に合格している。その結果、17人全員が東京大学ではなく、海外大学に進学している。
2020年からは、大学入試センター試験に代わる大学入学共通テストで、外部検定試験を利用できるようになる。外部検定試験の候補には、海外大学の出願に使えるものが多く含まれるため、藤井氏は「日本だけではなく、海外の大学を受けようとする受験生は増えると思う」と予想する。
筆記試験不要の大学が増えれば、学力の劣った学生が増えるのではないか――。そう考える人がいるかもしれないが、事態は逆になっている。つまり筆記試験だけで入試を行うような大学には、もう優秀な学生は集まらないのだ。大学入試では、試験勉強の結果だけではなく、さまざまな経験を通して身につけた学力が問われるようになっている。机に向かう勉強だけが「学び」ではない。そうした当たり前のことに、ようやく日本の大学が気づき始めたといえるのかもしれない。