成果を出さなければ次はないと研究者に言い続けるのか

言うまでもなく有期契約労働者の雇用安定を目的としたのが無期転換ルールだ。

その前提を踏まえつつも、研究者だけを通算契約期間5年超から10年超へと例外扱いにしたのは、有期雇用を繰り返し、その中で研究において切磋琢磨することで能力向上を図ることができるというのが表向きの理由だった。

とはいえ、研究者といえども一定の収入を得て衣食住を営む一般生活者である。「成果を出さなければ次の職はない」と言われ続けるのは、しんどいことであるはずだ。もちろん、それを理由に不正に手を染めることは許されないが、すべての研究者が契約更新し続ける強いメンタルとスキルを持っているわけではないだろう。

今回のiPS細胞の論文捏造は、担当の助教がこうした雇用不安を強く感じるあまり犯してしまった可能性も否定できない。

有期契約の若手研究者に対し、成果を出さなければ次の職はないという“縛り”を設け、成果を競わせる現在の雇用方法には、副作用として研究不正発生のリスクが今後も伴うだろう。それでも、この雇用スタイルを続けるのか。

それとも、無期契約者として、雇用が安定した環境下で研究に専念させ、研究開発の向上につなげようとするのか。

どちらが日本の科学技術力の発展につながるのか、山中氏を含む研究組織を率いる「管理職」や、この国の学会のトップに改めて考えてもらいたい。

(写真=時事通信フォト、iStock.com)
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