「キンドル」が市場を席巻できた理由

この5項目を使って、アマゾンを分析していきます。まず「道」では、アマゾンはミッション&ビジョンとして「地球上で最も顧客第一主義の会社」を掲げています。また、アマゾンの創業者でありCEOのジェフ・ベゾスは、バリューとして「顧客第一主義」「超長期思考」「イノベーションへの情熱」を常々口にしてきました。経営者が自分の事業に対してどれだけの哲学、想い、こだわりをもっているかというのは極めて重要です。ベゾスの場合、それが常人とは思えないほど強烈です。そして、その哲学は社員一人ひとりにも浸透し、商品やサービス、ビジネスモデルにも忠実に練り込まれています。

写真=iStock.com/Terroa

なかでも、アマゾンの競争優位性は、顧客第一主義の徹底に宿っています。顧客第一主義と表裏一体の関係にあるのが、ユーザー・エクスペリエンス(顧客の経験価値、以下UX)です。アマゾンのUXに対するこだわりで、よく知られているのが電子書籍リーダーの「キンドル」です。さまざまな企業がトライしては失敗する中、アマゾンはデバイスの完成度もコンテンツの量も十分なUXを提供できるようになった段階でサービスを開始することで、電子書籍市場を席巻しました。

「天」については、アマゾンはまさに時間価値を事業化してきた会社といえます。クラウド、AI、ビッグデータ、IoTなど、新たなテクノロジーが商業化し始めたタイミングで、次々と事業化しています。こうしたスピーディな事業化によって、さまざまな機会が創出され、逆に機会損失を削減でき、先行者利益も獲得できます。