「投票日に落ち着いて投票しづらい」雰囲気だった

沖縄県の選挙は他の都道府県と比べて期日前投票の比率が高い。これは、基地問題を争点に保革が対立する地域事情から「早めに投票を済ませてしまいたい」という心理が働いているのが一因といわれる。投票日まで両陣営からしつこく投票を呼び掛けられる。投票所にいくと、知人が待ち構えていて、投票用紙をのぞきこもうとされるかもしれない。そういう煩わしさから逃れるために、早めに1人で投票を済ませてしまおうと期日前投票に流れるというのだ。

今回の名護市長選の投票率は76.92%。期日前に投票したのは44.40%。当日投票したのは32.52%となり「当日よりも期日前に投票した人が多い」という極めて珍しい選挙となった。基地移転をめぐり市が分断されている当地の選挙が、いかに「投票日に落ち着いて投票しづらい」雰囲気だったのかを裏付けるデータではある。

名護市の期日前の出口調査ではどのような理由でバイアスがかかったのか。同市は期日前投票ができるのは市選管の1カ所に限られる。マスコミはそこに駆けつける。そして投票した人を大勢の記者が囲み投票先を尋ねる。メディアスクラム状態だ。とてもではないが「落ち着いて」投票できる状況ではなかった。

回答を拒否した人が約6割

各社の期日前出口調査の結果は、稲嶺氏がやや優勢だった。ところが、回答を拒否した人が約6割に上った。そして、結果は渡具知氏の勝利。ということは、渡具知氏に票を投じた人の多くは回答を拒否していたことになる。実際、渡具知陣営の一部では意図的に「マスコミの調査には答えるな」と指示を出していたという。

名護市長選の結果は、マスコミの予想が外れたというだけの問題ではない。世論調査、情勢調査のバイアスが大きくなったというだけでもない。マスコミの報道に対する、市民の違和感が増幅していることを示しているともいえる。

(写真=時事通信フォト)
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