選挙戦でのメディアの情勢調査が、投票結果と大きく食い違うケースが相次いでいる。2月4日の沖縄県名護市長選では、情勢調査で優勢だった現職の稲嶺進氏が、新人の渡具知武豊氏に予想以上の「大差」で敗れた。なにが原因なのか。その背景には「マスコミ不信」の広がりがある――。
2月4日、名護市長選挙で当選確実となり、ポーズを取る渡具知武豊氏(写真=時事通信フォト)

マスコミによる事前調査と選挙結果の大幅なずれ

「国政選挙なみ」として注目された沖縄県名護市長選が4日行われた。自民、公明、維新が推薦した新人・渡具知武豊氏が、現職で民進、共産、自由、社民、沖縄社大の各党が推薦し立憲民主党が支持する稲嶺進氏を破った。事前の情勢調査では稲嶺氏の優位が伝えられていたのだが、逆転の結末だった。

だが、深掘りしていくと、この「逆転劇」はメディアの情勢調査の矛盾と限界に行き当たる。市長選では、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移転に反対する人たちにとって痛手であったのは間違いないが、メディアも「敗北」したといえるようだ。ここでは基地移転問題とは離れ、マスコミによる事前調査と選挙結果の大幅なずれがなぜ起こったのか、分析してみたい。

情勢調査ではダブルスコアだった

「本当に勝って良かった。県民の気持ちに寄り添いながら、さらなる沖縄の発展を全力で支援していきたい」

投票日の翌日5日朝。安倍晋三首相は記者団の前で、満面の笑みをたたえながら語りかけた。単なる一地方選とはいえ、基地移転に大きく前進し、年内に行われる沖縄県知事選にも弾みがついた。政府にとっては大きな勝利だった。

渡具知武豊氏 2万389票
稲嶺進氏   1万6931票

3500票弱の差は「接戦」といえば接戦だが、関係者の間では、予想以上の大差がついたという印象だった。そもそも開票が始まるまでは、稲嶺氏の勝利を予測する声のほうが多かった。事前にマスコミ各社が行った情勢調査は、すべて稲嶺氏がリードしていた。それも、ダブルスコアに近いような大差のものもあった。そのことを知っている者にとっては、開票結果は「まさか」だった。

自民党、公明党が全力で応援した渡具知氏が、終盤で伸びたという側面はある。今や自民党の広告塔になった小泉進次郎筆頭副幹事長が現地に入り多くの聴衆を引きつけた功績は大きい。ただ、選挙のプロたちの中には「情勢調査でダブルスコアだった時から、渡具知氏が勝つと思っていた」という声も聞こえる。どういうことか。