あ、これ、メガネスーパーって読むの?
メガネスーパーは、2011年から投資ファンドのアドバンテッジ・パートナーズ(AP)の支援を受け、経営の立て直しに取り組んでいた。私はメガネスーパーの社長に就任する前、そのAPに招かれ別の会社(クレッジというアパレル企業)の社長を務めていた。クレッジの経営を立て直した後、APから打診されたのがメガネスーパーの経営再建だった。
私の就任以前から、APはさまざまな改革を実行していた。社内インフラを整えたり、POSを導入したり、外部から優れた人材を引き入れたりと。それらは決して悪い打ち手ではないのだが、どこかチグハグだった。また、あらゆる施策が、お客さまの感覚とズレているのでは、と感じていた。たとえば、会社のロゴだ。
社長就任の打診をいただいたころ、私は自分の出身地である東京・吉祥寺に出かけた。メガネスーパー吉祥寺店を密かに観察するためだった。店舗の近くまで行き、人の流れや店の様子を眺めていたのだが、お客さまが店に入らない。来客数が想像よりかなり少ない。そのとき、1人のお客さまに「すみません。ここにあったメガネ屋さん、知りませんか?」とたずねられた。「え、目の前にありますよ」と私が答えると、「あ、これ、メガネスーパーって読むの?」という反応だった。
当時のロゴは、アルファベットが大きく使われ、かっこよくデザインされていた。社名のカタカナは小さく、メガネスーパーと思っていただけなかったようだ。私は社長になってすぐ、カタカナが目に入るロゴに戻した。
君たちは、真逆のことをやっている
さまざまなズレを修正するため、私自身も直接店舗運営に関わることにした。当時、メガネスーパーには約300店舗あり、それらすべてを6人のストアディレクターと2人のゼネラルマネージャーで見ていたのだが、彼らから上がってくる現場の声が、真実とは思えなかった。そこで「私に直轄領をください」と申し出た。東京や神奈川にある直営の6店を「天領」(天領とは、江戸幕府の直轄の領地)として、私が直接運営することになった。
店舗にいると、いろいろな問題が見えてきた。たとえば、接客スタイルだ。それまで、メガネスーパーの接客は基本的に「待ち」だった。蜘蛛のようにお客さまが網にかかるのをジッと待つ。来店数が多い時代はそれでよかったかもしれない。しかし、来客数が減った状況で、同じやり方を続けていた。「なぜ、積極的な接客をしないのか」という私の質問に、スタッフはこう答えた。
「お客さまにゆっくり見てもらうため、声をかけないようにしていました」
私は「それは違う。君たちは真逆のことをしている」と指摘した。私は、店頭で呼び込みを始めることにした。それだけのことで、お客さまが店内をのぞいてくれるようになり、入店してくださったお客さまにも果敢にアプローチした。私の話を聞き、購入してくださるお客さまが増えていった。メガネスーパーは、ごく当たり前のことをしていなかった。
店舗では、何かにつけて「そうじゃないだろ」と言うほかなかった。スタッフが私に抵抗しているのはわかっていたが、「それじゃダメだ」「どうしてこんなことになっているんだ」としつこく指摘し続けた。