産婦人科は「中国語ができる人を採用したい」
弊院のデータを見ると、その急増ぶりは明らかです。10年ほど前、2007年当時、新規に来院される中国人は月平均1~2人でした。それが現在は10~15人になっています。産婦人科には、継続的に相談や治療で通われる方が多いため、現在は100人ほどの中国人が弊院に通っているということになります。
あくまでも、これは私たちのクリニックという小さな世界の話で、公的な統計があるわけではありません。しかし、私の知る限り、ほかのクリニックでも中国人の来院が増えているようです。最近では、産婦人科医の仲間が集まると「中国語で対応できる人を採用したい」という話をよくします。ただし、だからといって、言葉の問題以外に、ことさらに「中国向け」の診療をしようとしているわけではありませんし、その必要もありません。ただ、医療の質を上げていくだけです。
女性の悩みは日中同じ
日本では「爆買い」でも、中国人のマナーの悪さを指摘する報道が目立ちます。しかし、私には違和感があります。レディースクリニックを訪れる中国人の態度は、日本人とまったく変わりません。国籍は違っても、悩める女性の胸中はみな同じということだと思います。
例えば、上海からいらした李晨晨さん(36歳、仮名)。年上の旦那さんは、上海で働くビジネスパーソンで、安定した収入があるそうです。李さんからは、こんな相談を受けました。
「結婚して8年経つけれども、子供ができないんです。そもそも、結婚後1年経たずにほとんどセックスレスになっています。しかし、義母からのプレッシャーはすごくて、どこで調べたのか『妊娠しやすくなる方法』をいろいろ伝授してくれる。ですが、私にとっては負担になるだけ。主人も精液検査を受けようともせず、性交渉を試みようともせず、それなのに親戚などが集まる場所では『子供がほしい』と言っています。でも、私と本気で妊娠の話をしてくれることはありません……」
「一人の女性として扱われない」
「性交渉はなくなっているけれど、子供がほしい」という方は、日本でも数多くいます。他にも、夫婦の性の関係や不妊への悩み、シングルマザーになることの不安など、悩みは日本人と同じ。もちろん生殖器の疾病など、抱えている病気も、日中で同じです。年齢も、平均すると35歳前後。日本人の相談者と共通しています。