ゲームよりも勉強では、才能は伸びない

【田原】問題は、どうやって教育を変えるか。水野さんはどんな会社をやろうと考えたのですか。

田原総一朗●1934年、滋賀県生まれ。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所入社。東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、77年よりフリーのジャーナリストに。本連載を収録した『起業家のように考える。』(小社刊)ほか、『日本の戦争』など著書多数。

【水野】中学生や高校生一人ひとりの可能性を伸ばす教育をしたくて、大学の同期と会社の後輩を誘って3人で会社をつくりました。人が伸びるのは、自分の好きなものを見つけて夢中になっているときです。中高生の1番伸びる時期に、夢中になれるものを見つける手伝いをしたいなと。

【田原】それがプログラミング教育だったんですか。

【水野】僕は理系の教師だったので、「ゲームをつくりたいけどやり方がわからない」「つくったから見て」と生徒から相談されることが多かった。でも、親御さんは「パソコンばかりやってないで勉強しなさい」といって、いいゲームをつくっても褒めてくれません。それでITへの興味を失ったり、我慢してやめてしまう子は少なくない。関心のある子がいるのならば、思い切り伸ばしてあげたい。それが最初のきっかけです。

【田原】子どもたちはそんなにプログラミングに興味があるんですか。

【水野】スマートフォンの影響が大きいです。昔はパソコンが好きな人しかプログラミングに興味を持ちませんでしたが、最近は中高生でもスマホを持つようになって身近になった。いまでは野球部やバレー部の子どもでも、「自分もアプリをつくってみたい」といってます。

【田原】ライフイズテックは、キャンプという形でプログラミング教育をやっていますね。キャンプって何ですか?

【水野】夏休みや春休みなどを使って集中的に勉強するコースのことです。プログラミング教育をするにあたって、まずはアメリカでどんな教育が行われているのか視察にいきました。シリコンバレーのスタンフォード大学で見たのが、まさにキャンプ方式のプログラミング教育。200人くらいの子どもたちが集まっていました。これを日本でもやろうと。

【田原】始めたのはいつごろですか。

【水野】2011年。最初は3月の春休みにやる予定でしたが、震災があって延期に。5月のゴールデンウィークに小さな講座をやって、7月の夏休みから本格スタートしました。

【田原】最初の生徒はどうやって集めましたか?

【水野】会社を辞めて起業準備中、僕は早稲田高校で週3回、非常勤講師をしていました。最初はその高校の生徒に声をかけました。1回目は、わずか3人。そこから増え始めて、2回目は40人。いまは大きなキャンプだと600人。年間でいうと50回の開催で、7000人以上が参加してくれるようになりました。

【田原】場所はどうするの?

【水野】大学の教室を借ります。東大、早稲田、慶應、九州大……。

【田原】なるほど、スタンフォードでやっていたのと同じだ。