プログラミングなら、世界と勝負できる

【田原】採用したら、すぐ先生ですか。

【水野】いえ、100時間の研修をやります。技術やファシリテーション、そして実地の研修を経て現場に出します。ちなみに研修は、マイクロソフトやサイバーエージェント、リクルートなどの企業に協賛していただき、場所を無料でお借りしています。

【田原】どうして企業が協賛するんですか。何かメリットがある?

【水野】企業は優秀なエンジニアがほしいのです。僕たちの大学生のメンターは技術力やコミュニケーション能力が高くて、就活でも強い。実際、大手メディア企業が採用したエンジニア80人のうち、ライフイズテック出身が15人いたことがありました。

【田原】なるほど。就職につながるからメンターになりたがるわけか。プログラミング教育はこれから盛り上がりそうですが、日本の学校はスマホ持ち込み禁止のところがほとんどだ。遅れていませんか?

【水野】現時点では遅れています。アメリカはすでにパソコンを持っていくことが普通です。でも、もうちょっとで日本も変わるでしょう。20年から小学校でプログラミングが必修になります。いま実証実験の最中で、小学校3~4年生あたりから授業をしていく見込みです。

【田原】でも、いまの学校にプログラミングを教えられる先生なんていますか?

【水野】そこは課題になるでしょう。プログラミングの世界は進化が速く、1度勉強したらずっと教えられるものではありません。教材を提供したり、先生に研修を行うなどして、協力できたらいいと考えています。

【田原】入試で求められるようになり、一方で学校の先生のレベルが低いと、水野さんの教室に通う子どもたちが有利になるかもしれない。新たに格差が生まれたりしませんか。

【水野】格差は問題です。たとえば東京と地方では情報や経済力に格差があって、地方にはプログラミングに興味があっても学べない子どもたちが大勢いる。それを解決する方法としていま期待されているのがオンライン教育。インターネット動画で授業をやることで、場所や料金の問題をクリアできるはずです。

【田原】ライフイズテックで、プログラミング教育の教材をつくる?

【水野】はい。オンライン教育で課題になっているのは継続率。教室やキャンプと違って強制力がないから、よほどモチベーションが高くないと続かないのです。僕たちのキャンプは複数回受けてくれる人が50%ほどで、オンラインだと、いい教材でも5%程度。そこをなんとか変えていきたいなと。

【田原】将来は世界にも出ていく?

【水野】すでにシンガポールとオーストラリアでスタートしています。また、アメリカのテキサスの中学校では僕たちのソフトが使われています。プログラミング教育は欧米がやや先行していますが、差はわずかで、教える人材やいい教材がないという課題はどこの国でも共通している。僕たちがリードできる可能性は十分にあると思っています。

【田原】ぜひ頑張ってください。

水野さんから田原さんへの質問

Q. 子どもの能力を伸ばすには何が必要ですか?

僕はもともと絵描きになりたかった。小中学校で近畿のコンクールで入賞して、高校は美術部に入部。ところが2年生のとき、新入生の素晴らしい絵を見て、「自分のは“絵モドキ”だ」と気づいて断念しました。

次は作家になろうと考えました。ところが石原慎太郎の『太陽の季節』を読み、「これはとても書けない」と挫折。そのあと芥川賞を獲った大江健三郎の『飼育』を読んで完全に挫折しました。

僕は何をやっても才能がありませんでした。ただ、好奇心だけはあった。だから次々にいろんなことをやり、いまも自分の好きな仕事ができている。興味のあることを手当たりしだいにやるのが1番です。

田原総一朗の遺言:才能よりも、好奇心を伸ばせ!

(構成=村上 敬 撮影=松本昇大)
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