方向オンチを直すにはどうすればいいのか。空想地図作家の今和泉隆行さんは「方向オンチの人は空間を『右と左』で考えてしまうため、自分が向かっている方向を捉えることができていない。グーグルマップではなく、マピオンなど情報量の多い地図アプリを使ってみるといい」という。文筆家の佐々木ののかさんが聞いた――。(後編/全2回)
グーグルマップ
写真=iStock.com/bgwalker
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グーグルマップがないと生きていけない人たち

前編から続く)

――「グーグルマップがないと生活できない」と嘆く人もいますが、方向オンチの人とそうでない人の間には、どのような違いがあるのでしょうか。

【今和泉】場所や経路をどのように記憶しているかの違いではないかと思います。私が思うに、ゆるがない方向感覚を持つには、「俯瞰ふかんできるかどうか」が重要です。

俯瞰できる人は、地図上の情報と目の前の風景を一致させられるので、方向オンチにはなりません。「絶対音感」ならぬ「絶対方向感覚」を持っている方もごくまれにいて、この感覚を持つ私の知人はなにも意識しなくても北を感じるそうです。

私には「絶対方向感覚」はないのですが、頭の中で大雑把な地図や路線図は把握しているのと、移動するときに東西南北のどの方位に進んでいるかを意識しているので、電車の乗り換えや駅を降りてからの移動でも、どの方向に行けば良いかは迷いません。

なんでも「右・左」で考えるから地図アプリも使いこなせない

――俯瞰できない人は、なぜ方向オンチになってしまうのでしょうか。

【今和泉】方向オンチの方は、東西南北といった方角や方向感覚に強い苦手意識を持っているがゆえに、なんでも「右・左」で考えてしまう人が少なくありません。ただ、「右・左」で記憶していると、思いもかけないところで道に迷ってしまうことがあります。

たとえば、「駅のホームから階段を上って右の改札」と覚えていたとして、逆サイドの階段を上って右に曲がると、全く逆の方向に進んでしまいます。改札の名前をしっかり覚えていると良いんですが、改札の名前が書いてないことも多々あるので、駅を出て東西南北大体どちらの方向か覚えておくと、間違った方向には行きません。

また、グーグルマップなどの地図アプリを使っているときも、進行方向が上になるように地図をぐるぐる回しているうちに、どの方向に向かっているのかわからなくなってしまうこともあります。地図は回してもいいのですが、全体感を見失ってしまうのは問題です。

方向オンチの人を一言で言うと、「地図のように俯瞰した全体像と目の前の光景を重ねることができない人たち」と言えるのではないかなと思います。