意外と固有名詞を間違えて覚えている

――空間の捉え方以外に、方向オンチになる原因はありますか?

【今和泉】方向オンチは地図が読めないことに起因すると考えられがちなのですが、固有名詞を間違えて覚えているなど、文字情報に関係する理由が意外と多いのです。

コンビニも銀行も同じ店舗が複数あったります。「駅前のセブン‐イレブンで」と言っても、駅前にセブン‐イレブンが何店かあったりするので、店舗名を正確に伝えたほうが良いでしょう。目印となる店名を間違えてしまうと、全く違う場所に進んでしまいますから、結果的に迷ってしまうんですね。

最寄り駅が合っていればまだいいのですが、固有名詞を正確に覚えられないがゆえに目的地を間違ってしまうこともあります。たとえば「青梅」と「青海」のように1文字目が同じで字面も似ているケースは、固有名詞を間違える悲劇の“あるある”として話題になりました。

「竹橋」と「竹芝」のように1文字目が同じで、読み方が似ているケースでは、曖昧な記憶だと間違えてしまうかもしれません。方向オンチではない方々にとっては信じられないことだと思うのですが、意外とこういう間違いをしている方は少なくありません。

ほかにも「田端」と「田町」のように1文字目が同じで全体的に何となく似ているケースや、「鶴舞」と「舞鶴」のように字や読みの順番を間違えると全然違う地名になるケースなど、至るところに罠が潜んでいます。自分が間違いやすいパターンを覚えて、繰り返し確認する習慣をつけると迷いにくくなります。

「いまなにが見える?」と聞かれてもまともに答えられない

【今和泉】また、方向オンチの方が迷っているときに、電話などで「いまなにが見える?」と聞かれて、わかりやすい情報を伝えられないのも問題です。

たとえば、「細長いビルが並んでいる大通りで」などと見える風景の説明をしても、そんな大通りはたくさんあります。「駅の出口と銀行がある」と伝えても、駅の出入り口も銀行も何カ所かあることが多いので、場所を1つに絞り込めません。

固有の情報は「あれといえばここしかない」という文字情報のことです。自分のいる場所、「ここはどこなのか」を確実につかめれば、地図を味方につけることも、人を味方につけることもできます。だから、方向オンチの人には、そこにしかない固有の情報を見つけてくれと口を酸っぱくして伝えています。

――固有の情報の例としてはどんなものがありますか?

【今和泉】信号機の下や横に付いている交差点名のプレートや、電柱に付いている「▲▲何丁目」などと書かれた住居表示版、地下鉄の新宿三丁目駅「B1」などの出口番号、ビル名やコンビニ、銀行の店名などです。コンビニや銀行はたくさんあるので、「セブン‐イレブン」や「三井住友銀行」といった社名だけではなく、店名まで確認してください。

ただ、固有名詞は意外と小さく、よく見ないと見つけられないことが多いんですよね。ビル名の看板は小さいですし、交差点名のプレートはすべての信号機に付いていないケースもあります。コンビニだと看板の横に小さく書いてあるか、ドアやガラス窓に印字されているかで、見えにくいことも多々あります。

はじめは探しにくいかもしれませんが、法則を覚えれば見つけやすくなるので、こうした情報にピントを合わせるよう意識して生活してみてください。