なぜ孫正義は嫌われないのか
社長が会社売却で重視する最大のポイントは、社長の自己評価欲求を満たすことです。そのために大切なのは、あなたがいかに会社のビジネスをよく理解し、商品やサービスに魅力や可能性を感じているかを伝えることです。
ここでも孫さんの買収法が参考になります。じつは孫さんは、この相手の自己評価欲求を満たすプレゼンテーションが天才的にうまいのです。そして、相手の社長を心からリスペクトし、従業員も取引先も大切に扱う。「買収する」のではなく、「出資させていただく」という姿勢なのです。日本の大企業が海外企業の買収で行うような、トップを突然代えるようなことはしません。
もしあなたが、会社を買うことになったら、まずは孫さんのように従業員や取引先の信頼を得て、きちんと「社長になる」ことが大事です。挨拶や掃除など、小さなことからコツコツと積み上げて信頼を得てから社内のリソース、財務状況、人材、クライアント、競合などをじっくりと調べ上げてください。会社を買う前には気付かなかった多くのことが見えてきて、正しい業務改善ができるようになるのです。
あなたの中小企業の経営者としての第二の人生が成功することを祈ります。
世の中を動かす言葉が出たらチャンス!
孫さんは「時代のキーワード」を見て、関連する企業に投資して成功した。たとえば、10年前からSBIインベストメントでは、インターネット上のお金の取引を「ネット金融」という名前で呼んでいたが、あまり注目されなかった。それが「フィンテック」というバズワードがついた途端、SBIは300億円の投資ファンドを集めることができた。投資家や世の中が期待する言葉に注目することで大きな利益がやってくる。
日本創生投資 社長
1978年、兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)へ入社。11年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。16年より現職。