15■熱意に欠ける勘違いな“省エネ”営業マン

「結局、人を動かせるかどうかは、その人のパッションにかかっています。熱意でしか人は動かせません」

と日本IBMの鈴木氏が語るのは、自身、仕事に熱意を注ぐからだろう。

「購買として相手を突っぱねれば、ディールは不成立です。でも、ノーディールは最低最悪で何としても合意に至りたい。調達先の営業マンもわれわれと熱意を共有するから社内を動かしてでも、合意を目指そうとするのだと思います」


ヴィレッジヴァンガード 新宿ルミネ店 店長●櫻田貴行

以前、地方工場の購買部にいた大和ハウスの杉浦氏もこんな思い出がある。

「今日中に部材が入らないと間に合わないというとき、取引先の営業マンが自分でトラックを運転してくれたり、手に抱えて新幹線に飛び乗ってくれたりした。購買が1日遅れたら工場ではラインが止まり、建築現場の予定もすべて狂う。購買の仕事の意味を理解し、共有してくれる営業マンは動き方が違います」

ヴィレッジヴァンガードの櫻田氏も最近、感動体験をした。

「7月に東京で震度4の地震があったとき、『大丈夫ですか』と1番に電話があったのは北海道の営業マンでした。店内が目に浮かんだようです。ぼくらと同じ光景を見てくれたことに感動しました」

世の中はエコ時代だが、営業マンに“省エネ”や“節労”はなさそうだ。

16■自分の頭で提案できない“口パク”営業マン

熱意をもち、労を惜しまない。

一見、体育会系社員を思わせるが、進化した営業マンが異なるのは頭に“知的”の2文字がつくことだ。バイヤーたちが求めるのは単なる商品ではなく、優れた「提案」であるからだ。

「いかに新しい発想とアイデアで提案してもらえるか。同じベクトルをもって提案してもらえれば、その会社に切り替えるよう社内を説得できます。反対に、1番対応しづらいのは、『何かお困りのことないですか』と聞くだけのご用聞きです。提案のない方に来ていただく意味はないので、『担当を替わってください』といいます」(大和ハウス・杉浦氏)

「営業マンに望むのは、『うちの商品を買ってください』ではなく、お店をじっくり見た上で、『これが並んでいたらイケますよ』と提案してくれることです。一緒に店をつくっていける人とはたとえ卸値が割高でも長くつきあっていたい。対照的なのがカタログを読むだけの人で、自分で提案できないただの口パクです」(ヴィレッジヴァンガード・櫻田氏)