「親が勉強すると子どもも勉強します」

▼子どもを伸ばすために親ができること3
「親も共に学ぶ」

淳子さんは、響生くんが小さいときから勉強に寄り添うようにしていたという。

しかし手取り足取り教えるわけではない。学校でその日勉強してきたことを、響生くんに教えてもらうのだという。

「学校で習ったことをもう一回私に対して“授業”することが、いいアウトプットになっていたと思います」

自分の頭で理解した上で、母親に伝えることで、知識が定着しやすくなるのだ。集団授業ではないから、母親から容赦なく質問も出てくる。なかには意表を突く質問もある。それらにうまく回答するためには、知識を完全に血肉化できていないといけない。母親と一緒に算数の問題を作って、互いに解いてみるのも遊び感覚で楽しいそうだ。

淳子さんは「親が勉強していると子どもも勉強するようになる」という。だから、子どもが使っている教科書にもしっかりと目を通す。教科書を熱心に読んでいる母親のほうが、「勉強しなさい」と言いながらスマホをいじっている母親より、子どもの向学心を刺激するはずだという信念があるのだ。

▼子どもを伸ばすために親ができること4
「毎日欠かさない習慣を徹底」

子どもにやさしく寄り添った子育てをしているという印象の淳子さんだが「これだけは徹底している」ということもあった。

*旅行中でも毎日欠かさず8枚のプリントをやり続ける。その積み重ねにより、大人顔負けの数学力が身についたのだ。(写真提供=菅原淳子さん)

響生くんが小学校低学年の頃、短時間の勉強時間を設け、子どもにプリントをやらせたのだ。1日にやるのは塾でもらったプリント2教科8枚。それが終わったら追加の課題は与えず、自由時間にしていたそうだ。

課題の量はそれほど多いわけではない。ただし、「必ず毎日」続けたという。たとえば家族で旅行へ出かけた時もプリントを持参し、サボらない。低学年のうちにこうした習慣を身につけたことで勉強が苦にならなくなったようだ。

このやり方について、他の母親からは「子どもがかわいそう」と言われたこともある。しかし、その言葉は、「勉強はつらいものだ」という思い込みによるものだろう。低学年のうちから、毎日コツコツと学ぶリズムを身につけることは大きな財産になる。筆者は淳子さんのブレない「信念」に触れ、人に言われなくても自ら机に向かう子どもに育てるためには、まず母親自身が勉強に抵抗を持たなくなることが必要だと感じた。