天才数学少年の母親はマメでフットワークが軽かった
▼子どもを伸ばすために親ができること5
「目前の受験ではなく将来を考える」
中学2年の時点ですでに大学生レベルの数学知識を持ち、今や数学マニアの大人に混じって語り合うこともあるという響生くんの夢は、数学者になることだ。だが、数学者になる道は険しい。時間も根気も必要だ。誰もがなれるものではないが、淳子さんが、響生くんの未来のために今のうちにできる事はやってあげたいと考えていることがある。それは、人脈を作ることだ。
「数学の世界は深く広いので、自分の好きな数学のジャンルを研究している人に出会うまでは、砂漠をさまようような状態を味わうものなんです。多くの人と知り合ううちに数珠つなぎのように、自分が目指すジャンルの関係者に巡り会える。そうしたことを期待して、数学関連のイベントを見つけては連れて行っています」
大学受験などではなく、もっと先を見据え、響生くんの“師匠”を探しているのだ。
▼子どもを伸ばすために親ができること6
「得意なことをどんどん伸ばす」
もうお気づきかと思うが、淳子さんはマメでフットワークが軽い。
「子どもが小さい時から、常にアンテナを張っていました。響生は『パナソニックセンター東京』(東京都江東区)のなかにある『リスーピア』(理数の魅力と触れあうための体感型ミュージアム)が大好きでした。さまざまな専門家を招いたイベントを開催しているので、ウェブサイトをこまめにチェックしていました。日本科学未来館(同区)にもよく連れて行きましたね」
こうした情報はインターネットで集めたそうだ。子どもの興味があることを検索し、調べて教える。受け身ではなく、いい情報を自ら探しにいく姿勢が淳子さんにはあるのだ。
数学系のイベントに積極的に息子さんと共に参加するのもそのいい例だ。こうした交流を通じて良き指導者や数学が好きな友人・知人に恵まれた。子どもの専門ジャンルは必ずしも親の得意ジャンルではない。そのギャップをカバーするためにも、子どもの好きな世界に親自身が飛び込んでいくことも大切なのだ。
多くの親は子どもの不得意科目をなんとかしようと考えがちだが、子どもの得意な部分を見いだし、伸ばすことで、子どもは自分らしく生きやすくなるのかもしれない。天才数学少年の母親は、決して机の上だけにとどまらない子育てで、才能を伸ばしていたのだ。