最後の主張はだれに呼びかけているのか?
朝日社説は「森友・加計学園をめぐる問題で、国民に約束した『丁寧な説明』を今度こそ果たす重い責任が首相にはある」と主張する。これもその通りだ。
「(演説)内容もあっさりしていた」と指摘し、「北朝鮮情勢の緊迫と少子高齢化を『国難』と強調し、トランプ米大統領の来日など外交成果を誇る。その大半が、衆院選や一連の外交行事ですでに語ったことの繰り返しに過ぎない」と書く。
次の指摘は朝日の憶測だが、遠からずそうなのだろう。
「先の通常国会では、森友・加計や陸上自衛隊の日報問題で野党の追及を受け、内閣支持率が下落した。その二の舞いを避けるためにも、野党の質問の機会を少しでも削りたい。そんな狙いがうかがえる」
最後に朝日社説は「巨大与党に『多弱野党』が対峙する。その最初の場となるこの国会のありようは、年明け以降の国会運営にも影響する可能性がある。国会審議を形骸化させてはならない」と主張する。
この主張は弱い。なぜならだれに呼びかけているかが不明確だからだ。国会審議を形骸化させないためには国民一人ひとりが関心を持って国会を監視する必要がある。社説ならそこまで書くべきだ。
「将来展望を示せ」と読売社説
次に読売新聞の社説。見出しで「長期展望がないのは物足りぬ」と明確に訴えている。安倍政権を擁護する「御用新聞」とばかり思っていたが、きちんと書ける能力があるわけだ。社説全体の中身もしっかりしている。社説を担当する論説委員はこの調子で書き続けてほしい。
「衆院選大勝で得た政権基盤の安定を生かし、政策課題を着実に前進させる。そのためには、野党とも丁寧に合意形成を図ることが重要である」
この書き出しも実にいい。いまの安倍政権には「野党との丁寧な合意形成」が必要なことはいうまでもない。
読売社説は「衆院選で『国難』と位置付けた北朝鮮問題と少子高齢化対策に重点を置いている」と書いた後、ズバリ安倍首相に要求している。
「安倍内閣では最も短い演説だった。年明けに施政方針演説を控えているとしても、長期政権が視野に入った今、将来展望を示さなかったのは物足りない。今後の審議でより具体的に語ってほしい」
これも正しい主張である。10年以上、新聞社で論説委員を続けてきた沙鴎一歩としても、褒めたくなるような書きっぷりだ。