リスナーが満足するユニークな番組づくり

【三宅】それが、毎回20分のテキストになった(現在は15分)。しかも、それが30年も続いているのですから、本当にすごい。長くひとつの仕事を継続する秘訣はなんでしょうか。

【杉田】2002年から04年に1年半中断しているんですが、再開の要望がたくさんあったと聞いています。またやるからには、よりいいものを作らなきゃいけない。リスナーが満足してくれるユニークな番組にしなければなりません。その姿勢がリスナーにも通じたということではないでしょうか。それに優秀なスタッフに恵まれたことも幸いでした。

『対談(2)!日本人が英語を学ぶ理由』(三宅義和著・プレジデント社刊)

【三宅】まさに、ビジネス最前線の情報が伝わってきます。しかも、オンビジネスとオフビジネスの場面があり、時代の動きとか米国の習慣まで理解できます。テキストに生かせる情報はどのようにして収集しているのですか。

【杉田】最近はアメリカのメディアをよく読んでいてUSA Today、The New York Times、The Wall Street Journalの3紙は欠かせません。今の時代に何がトレンドになっているかをつかみます。

一般の英語とまったく異なった形の「ビジネス英語」というものが存在するわけではありません。それに、この世の中にはビジネスにまったく関係のない事象はほとんどありません。教育、芸術、スポーツ、犯罪も、すべてお金がからんでいます。仕事の話(shoptalk)しかできない人は決して尊敬されません。広い意味での「ビジネス英語」は、社会の動きと密接な関係を持っています。

この番組を英語の世界への「窓」と考えて、それを開いて、ビジネスに関連したいろいろな場で起こっていることを吸収してみてください、とお願いしています。一見ビジネスとはあまり関連のなさそうなテーマも、知識として頭に入れておけばきっと役に立ちます。

【三宅】いずれにしても超長寿番組ですから、その間に何か面白いエピソードのようなものもあったと思います。杉田さんの印象に残っていることは何ですか。

【杉田】番組の初期の頃に、イギリスのある化粧品会社をモデルにストーリーを展開しました。1人のリスナーの女性が番組を通じて、その会社の考え方に非常に感銘し、その日本法人に就職したそうです。

その方から年賀状をもらったのですが、そこには「勤めてからも、ずっと番組を聴いています。職場でもう1人、先生のラジオを聴いている男性がいて、その人と職場結婚をし、子どもが生まれました。番組を聴いていなかったら、この子は生まれていません」とありました。小さなお子さんが写真に写っていましたが、その子ももう成人になってといると思います。

(構成=岡村繁雄 撮影=澁谷高晴)
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