すでに異次元緩和の手じまいモードに
こうした中で、黒田日銀は、出口に向けた地ならしを徐々に進めている。かつてないスケールで実施された金融緩和には、副作用も想定され、正常化に向けて綿密なシナリオを用意しておく必要がある。
異次元緩和の本丸である国債の購入は年80兆円の目標が掲げられているが、足元では年60兆円程度まで、ペースを落としている。
昨年9月に長期金利を0パーセント程度に誘導する目標を導入した段階で、緩和の事実上の縮小が進む道筋が付けられており、黒田日銀は、すでに異次元緩和の手じまいモードに入っていると言えよう。長期金利は、政府の国債発行の量に大きな影響を受けるため、日銀が長期金利の誘導目標を設定した段階で、金融政策の主軸について、政府に下駄を預けたに等しく、異次元と称された日銀の国債買い入れの量は、縮小に向かっているのが現状だ。ETFの買い入れについても、弾力的な措置の中で、規模の縮小に向かって舵が切られる可能性もある。
ただ、デフレ脱却は、依然として重い課題であり続ける。北朝鮮問題などの地政学的なリスクも、懸念材料だ。突然の経済危機が訪れた時に、日銀が導入できる景気刺激策は極めて限られている。黒田日銀が2期目に入っても、待っているのは難しい環境の中で異次元緩和の出口を探る、いばらの道なのだ。(文中敬称略)