技術開発で優位に立つことが生き残りの条件

マツダの製品開発姿勢は、以前から一貫して「理詰め」だ。だが多くの消費者は「電気自動車のほうが環境にやさしい」と受け止めている。そうした中で、トータルでCO2を考えてその最適解を持つクルマを使うべき、という主張を伝えるのは生易しいことではない。

実は、この時期に試乗会を開催したのは、そうした主張を届けるためだったとも考えられる。試作車の発売は、まだ1年以上先だ。だが同じようにマツダは2010年の10月、最初のスカイアクティブ技術のときにも発表を先行させた。実際の製品である「CX-5」を発売したのは、技術を公開してから1年4カ月後の12年2月だった。消費者に主張を届けるには、それだけの時間が必要ということだろう。

ただし、もうひとつ別の見方もできる。それは次世代エンジンの開発が当初の計画よりも遅れているのかもしれない、というものだ。

2015年4月の時点では、翌16年4月から19年3月までの3年間の幅で 次世代エンジンを市場投入すると語っていた。しかし、当該期間のほぼ半分を過ぎた今年8月のプレゼンテーションでは、市場投入は当該期間の最後の四半期19年1月から3月の間、と特定された。なんとか間に合わせたとは言える、のかもしれないが、遅れているという印象は否めないだろう。

試作車の公開は、こうしたイメージを払拭する狙いがあったのではないだろうか。新技術を公表することで、付加価値のある製品をつくる力があることをアピールできる。

付加価値とはどういうものか。試乗会で小飼社長はこう語った。

「電気自動車、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、なんであっても、新しい技術を搭載したことを理由にしてお客さまにそのコスト負担をお願いするということはしたくない」

先端的な技術を投入した競争力のある製品を、これまでと変わらない価格で販売する。マツダは競争力の源泉をそこに求めている。マツダは技術開発で常に優位に立つことで、電動化の時代にも生き残ろうとしている。

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