ガソリンとディーゼルの到達点はひとつ

つまり、「希薄燃焼」を実現させた次世代エンジン「スカイアクティブ-X」とは、ガソリンとディーゼル両方の特長を兼ね備えた、一石二鳥のエンジン、ということになる。

次世代エンジン「スカイアクティブ-X」と小飼雅道・マツダ社長。

今回、試験場には、「スカイアクティブ-X」を積んだ試作車が4台、そして比較対照として同じ排気量の現行アクセラが4台用意されていた。試乗時間は20分間。指定されたコースを実験部のスタッフ同乗のもとで走った。

筆者が試乗した際の印象は「絹ごしのディーゼルエンジン」。もちろん搭載しているのはガソリンエンジンなのだが、ディーゼルエンジンのような力強さを感じたのだ。

エンジンの違いは、豆腐にたとえるとわかりやすい。一般的なガソリンエンジンが「絹ごし」だとすれば、ディーゼルエンジンは「木綿ごし」だ。エンジンの滑らかさに関しては、一般的にディーゼルよりガソリンのほうが上回る。「スカイアクティブ-X」はガソリンらしい滑らかさがありながら、ディーゼルエンジン特有の力強さも感じられた。従来にはない感覚といっていいものだった。

かねてより、マツダの開発エンジニアは「乗用車の場合、内燃機関を究めれば、ガソリンとディーゼルの到達点はひとつ」と語っている。その意味で次世代エンジンは、ひとつの到達点といえるものだと感じた。

さらにマツダは、この画期的なエンジンを搭載する新しいボディー・シャシーの開発状況も公開した。それは「スカイアクティブ・ビークルストラクチャー」と呼ばれている。従来の車体構造の考え方を転換し、快適性や静粛性の向上を図るために、走行時に受ける外的な衝撃などをしなやかに受け流すような構造だ。

今回の試乗では、なめらかな路面の舗装路から、おろしがねの歯のようなざらついた路面に変わる場面があった。そのとき現行のアクセラは振動、騒音ともに大きく変化したのに対して、試作車は路面の変化をほとんど体に伝えず、騒音もほとんど変化がなかった。

クルマはあらゆるパーツを総合的に仕上げるもの。主要なパーツの性能・質が上がったとき、別のパーツも同様の向上を果たさなければ顧客を満足させられる“本物の製品”にはならない。今回、マツダが同時進行で開発している新しいエンジンと車体構造を組み合わせた試作車を公開したのは、その仕上がりに自信があったからだろう。