振り返りから学びへ

私が先に担当したクライアントは、外資系で日本に参入して間もない企業だったので、「これから伸びていくために」プロジェクトを実施したのに対し、失敗したプロジェクトのクライアントは日本系で業界での歴史も長い企業であり、「今の状態を変えるために」プロジェクトを実施しようとしていたのでした。業界が同じでも、ビジネスの状態が違っていたのです。

当然、外資系と日本系ではカルチャーも違います。外資系ではフランクな会話が好まれる傾向にありますが、日本系では立場や人間関係に気を使いながら、合意形成に気を配ることが望まれます。私はそれを重視していませんでした。

ステークホルダーに関しても違っていました。先のクライアントは、社内に対して影響力を持つ方が、イニシアチブをとってくれていました。ですから、その方の意見を重視しさえすれば、プロジェクトが道を外れることはありませんでした。

失敗したプロジェクトでは、ステークホルダーが複数いました。そうすると、一人だけの意見を聞いていればよいわけではありません。個別に対話したり、「検討会」「レビュー会」のようにみなさんに集まっていただく場を設定したり、そういうことを積み重ねて合意形成することが必要だったのです。

余談ですが、大企業では、部門間の調整がネックになって、なかなか前に進まないということをよく聞きます。ある大企業でのプロジェクトでは、プロジェクトの責任者を1人に決めてほしいと要望を出したところ却下され、かわりに3つの部門の部長の連名制で進めることを申し渡されたことがあります。若いころは、こうした事象は「責任回避でよろしくない」と思っていました。

でも、今は少し見直しています。それは、牽制機能についてです。大企業の場合、一部門が暴走して会社全体が倒れてしまったら従業員や取引先含め、影響は甚大になります。それを防ぐために、部門間の牽制は必要なのです。ただ、牽制しすぎて、ビジネスのスピードを止めてしまうことには注意が必要です。

こうして、プロジェクトを前にゴリゴリ進めるのが得意なマネジャーだった若き私は、もっと対話を繰り返して合意形成する必要性を学んだのでした。