自信喪失から自省へ

プロジェクトを外されたばかりの私は当初、うまく現実を受け入れることができませんでした。それまで大変なプロジェクトを、いくつも完遂してきた自負があります。でも現実として、外されたわけです。最初は、自分以外に理由を持っていこうとしていました。

「たまたま環境が悪かった」

「上司が邪魔したから」

「クライアントがコンサルを受け入れられないから」

でも、そうではないことを自分はわかっています。うまくプロジェクトを進められなかった理由の大部分は、自分にある。このまま仕事ができなくなり、会社を離れなければならないのでは?自信喪失にもなりました。その後、少し気持ちが落ち着いてから、考え直しました。

「なぜ、うまくいかなかったのだろう?」

「次に同じような機会があったら、どうしたらいいのだろう?」

幸運だったのは、ここでクビにならなかったことと、会社からコンサルティング方法論を社内で展開するための仕事を割り振られたことでした。

どの会社でも仕事の進め方は、ある程度決まっているものです。コンサルティング会社の場合、仕事の進め方はプロジェクトごとに変わってきます。ですが、おおよその進め方は共通しています。過去のプロジェクトを調査し、おおよその進め方やどういう点に注意しなければならないのかが記載されているのが方法論です。方法論どおりに進めれば、プロジェクトは絶対うまくいくということはありませんが、方法論を参考にして進め方を検討することが普通です。

私もマネジャーとして方法論は知っていましたし、方法論を参考にプロジェクトのタスクを検討していました。ですが、プロジェクトを失敗した私が、改めて方法論を読み解くと、自分がいかに表面的な理解にとどまっていたのかを実感しました。

例えば、方法論では、プロジェクトを開始する前にすべきこととして、このようなことが書いてありました。

「クライアントのビジネスの状態を把握する」

「クライアントのステークホルダーの意図を確認する」

字面でみると、当たり前のことです。クライアントのビジネスをある程度知らなければ、プロジェクトなんて始められないし、ステークホルダーがどう思っているのか知らなければプロジェクトはとんでもない方向に進んでしまう。

ですが、私の失敗はまさにここから始まっていたのでした。

「以前担当したクライアントと同じ業界だから、私はクライアントのビジネスを知っているのだ」

「以前担当したプロジェクトと同じように進めればいいのだ」

こう思い込んでしまって、まさに開始前にするべきことを怠っていたのです。

これをきっかけに自分のやってきたことを振り返ると、いろいろなことに気づきました。